学生時代、「合ハイ」というイベントに一度だけ参加しました。合ハイは、今も存在するのかどうか知りませんが、女子大学生のグループと合同でハイキングを楽しむものでした。野山を歩いたり、野外でゲームをしたりしました。
ところが、僕は口下手で、自分の容姿にもまったく自信がなく、全然楽しめず、二度と合ハイは参加したくないと思いました。
ただ、ちょっとはモテる男になりたいと、密かに自己啓発書や話し方に関する本をいくつか購読しました。購読した本の中で、ボブ・コンクリン著「人間の魅力」(創元社 1973年 *1)に出会いました。
「人間の魅力」という本は、熱意を高めることのよって魅力的な人間に変わること、熱意を高める方法、説得術、会話術、スピーチ術などが解説されています。
「楽になりすぎている」というコンクリンさんの言葉は、僕が反省するときの基準になっています。エピソードが少ないとか、実証性が乏しいとかの指摘もありますが、僕の座右書の一つとなっています。ただし、モテる方法は書いていません。
この本を読んだおかげで、サラリーマンになってから、仕事の技能や知識は劣るけれども、熱意は人並み以上で勤務することができました。また、社内研修の講師として「熱意」について語ったり、社内報に「熱意」について記事を書いたりしたこともありました。
僕が40歳半ば頃、田中真澄さんの講演会に参加する機会に恵まれました。田中さんは熱意の塊のような方で、汗びっしょりとなってご講演なさいました。
そのきっかけで、田中さんの著書「情熱の人生哲学」(ぱるす出版 2005年)を購読しました。この本は、フランク・ベトガーさんの名著「私はどうして販売外交に成功したか」(ダイヤモンド社 1964年)などを題材にしたものです。
フランク・ベトガーさんは、もともと野球選手で、熱意あふれるプレーでマイナーリーグからセントルイス・カージナルスの三塁手になった人です。人生いろいろあるもので、彼はケガで野球を引退し、その後、保険営業マンとして苦労を重ねた末、トップセールスマンとなりました。
「私はどうして販売外交に成功したか」には、フランク・ベトガーさんの熱意などの思考や行動内容が記されています。この本は、営業職だけでなく、あらゆる職種の方が一度は読むべきだと、僕は思っています。
それでは、熱意を高めるためにはどうすればよいでしょうか?
ウィリアム・ジェイムズさんの心理学に関する理論に基づき、コンクリンさんは、熱意ある行動をすることにより熱意がわいてくると述べています。
ベトガーさんも同様です。「情熱の人となるには、情熱をこめた行動をせよ」と。
「ウィリアム・ジェイムズ著作集・1 心理学について」(ウィリアム・ジェイムズ著 日本教文社 1960年)によると、行動と感情(熱意)、意志の関係が次のように述べられています。
実は行動と感情とは一緒に相ともなって表れるものなのであります。そして感情は意志の直接的統制をあまり受けないのでありますが、行動は意志の直接的統制を受けることが多いので、行動に規制を加えることによって、我々は間接的に感情を規制してゆくことができるのであります。
つまり、直接的に意志によって感情(熱意)をコントロールできません。しかし、意志によって熱意をこめた行動をし、間接的に熱意という感情を高めることができるのです。
さらに、コンクリンさんは、熱意をもっと高めるに次の四つを提唱しています。
- 積極的・肯定的な考えを持つこと
- 物事に興味、関心を持つこと
- 自分への憐れみ、不平、批判などの消極的、否定的な考えを捨てること
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動きを持って生き生きとすること
合ハイに参加したおかげで、熱意に関する研究までたどり着きました。