グライダー能力と飛行機能力について、外山滋比古さんは次のように述べています(「思考の整理学」 ちくま文庫 1986年)。
人間には、グライダー能力と飛行機能力とがある。受動的に知識を得るのが前者、自分でものごとを発明、発見するのが後者である。両者はひとりの人間の中に同居している。
グライダーは引っ張ってもらわないと、空を飛べません。一方、エンジンのついた飛行機は自力で空を飛べます。外山さんは、このグライダーと飛行機の特徴を、人間の能力に当てはめて名づけられたのです。
受動的に知識を得るのに適した場が学校です。学校では、カリキュラムどおりに先生と教科書に引っ張られて勉強するのが基本です。まさに学校は、グライダー人間養成所です。ただし、クラブ活動や生徒会活動などは、若干の飛行機能力の訓練になるでしょう。
僕の高校時代の前半は成績不良で、補習を受けたり追試験を受けたりしました。何とか成績の向上を図るために、同級生たちに勉強のやり方を聞きまくりました。そして、僕に合った勉強方法を工夫しました。これは、一種の飛行機能力の訓練となりました。
けれども、僕の勉強方法は、選択と集中により教科書などの内容を徹底的に覚えることでした。これでは、あまり飛行機能力は育ちませんでした。
大学時代では、講義や本の内容を理解したり覚えたりすることは何とかできたのですが、課題について自分の意見を述べたり疑問を呈したりするのが苦手でした。
サラリーマン時代、管理職に初めてなった頃は、自分で正しい判断を下すことに大いに戸惑いました。何とかしたい思いから、経験と自己啓発により、判断力を鍛える努力を続けました。
グライダー能力の基礎があっての飛行機能力です。ですから、どちらの能力も大切です。しかしながら、グライダー能力を得意とするICTなどの発達を考えると、今後ますます、人は飛行機能力を鍛えなければならないでしょう。