「Aさんには、こういう欠点がある。Bさんは、こんなことが苦手である。もっと優秀な人材が欲しいなあ」。ないものねだりをする前に、今の人材を有効に活用できないかを丁寧に検討してみましょう。
P.F.ドラッカーさんの著書「プロフェッショナルの条件」(ダイヤモンド社 2000年)にこういう逸話が記されています。
リンカーン大統領は、グラント将軍の酒好きという弱みを知っていました。また、飲酒の危険性も十分承知していました。
一方、北軍の将軍の中で、常に勝利をもたらしたのは、グラントでした。リンカーンは、グラントの戦上手という強みに基づいて、彼を北軍の最高司令官に任命しました。このことが北軍の勝利に大きく貢献しました。
もしも、リンカーンが、強みがなくても弱みの少ない人材を最高司令官に任命していたら、南北戦争はどうなっていたのでしょうか?
僕が勤務していた職場で、Cという仕事とDという仕事がありました。僕は、Cは得意でしたが、Dは経験不足で苦手でした。上司は僕に対し、Cの仕事に専念し、より高度なCの業務も遂行することを求めました。Dの仕事が非常に得意な人もいたため、職場全体のパフォーマンスは向上しました。
人の弱みに配慮しすぎると、平凡な組織にしかならず、パフォーマンスは向上しないでしょう。
「何ができないか」ではなく、「何がよくできるのか」が、人を見る着目点です。人の強みに基づいて経営や運営を進めることで、パフォーマンスが上がるのではないでしょうか。