外山滋比古さんの著書「思考の整理学」(ちくま文庫 1986年)によると、「セレンディピティ」とは
目的としていなかった副次的に得られる研究成果
と記されています。
この「セレンディピティ」という言葉は造語です。スリランカの童話「セイロンの三王子」をもとに、イギリスのホレス・ウォルポールさんが造りました。
三王子は、よくものをなくして、さがしものをするのだが、ねらうものはいっこうにさがし出さないのに、まったく予期しないものを掘り出す名人だった
と、外山さんは述べています。
ペニシリンの発明やポストイットの発明が、セレンディピティの好例とされています。
ヘンリー・ミンツバーグさんの著書「これからのマネジャーが大切にすべきこと」(ダイヤモンド社 2021年)に、ペニシリン発明のきっかけが記されています。
医師のアレクサンダー・フレミングさんが、ある日、実験用の皿の上にカビが発生し、その周囲だけ細菌が死んでおり、「奇妙だな」と思いながら、いったんは、そのサンプルを捨てました。
しかし、医師は、捨てたサンプルをゴミ箱から取り出しました。ひょっとして病原菌を殺すことに使えるのではないかと、思い直したからです。
これが「ちょっとした発想の転換」だと、ミンツバーグさんは述べています。さらに、ジョークを思いつく人であれば、この「ちょっとした発想の転換」ができると、おっしゃっています。
この夏、東京都社会労務士会が小学生とその保護者を対象として「夏休みこども年金教室」をオンラインで開催するとの報に、接しました。僕は最初、ジョークかなと思いました。
少し調べると、夏休みの自由研究として「年金新聞」をこどもが作ることに狙いがあるとわかり、なるほどと思いました。
年金は高齢者の問題だという発想を転換して、セレンディピティが生まれたらいいなあと期待しています。