細谷功さんの著書「仕事に生かす地頭力」(ちくま文庫 2015年)は、思考力の向上に大いに役立つと思います。
まず、基本的な思考法として「Why→What→How」で考えなさいと述べられています。
Whyは理由、原因、目的などを、WhatはそのWhyを達成するための「やること」を、HowはそのWhatを進めるための「具体的なやり方」を意味します。
5W2Hとの関連で言うと、「Who、When、Where、How Much」は、Howの中に含まれます。
また、この「Why→What→How」の考え方には、
① 結論から考える
② 全体から考える
③ 単純に考える
ということがベースにあり、重要です。①から③の「考える」を煎じ詰めると「Why」に収束するでしょう。
そして、こうした考え方は、問題解決は言うまでもなく、経営活動、販売活動、キャリア設計など、あらゆる場面に応用できるとのことです。
僕は困ったら「原点に返る」、つまり「そもそも」や「なぜなぜ」から考えることにしていますが、細谷さんの思考法に近いと言えましょう。
僕は出産祝の品を贈るために、妻とデパートに行ったことがあります。
僕たちの「Why」は、「ご出産のお祝いの気持ちを先方に表明すること」だということは決まっていました。さらに「What」は、金銭を贈る、手紙を書くなどの選択肢もありましたが、「先方に喜んでもらえる品物を贈ること」を選んだわけです。
しかし、具体的に何を贈るかというのは全然わからず、とりあえずデパートの売り場を見て回ることにしていました。ベビー服やベビー家具、おもちゃなどを見て回ると、時間を要するだろうな、果たして喜んでもらえる物が見つかるだろうかと、不安もありました。
最初に訪れた売り場で、僕たちの「Why」と「What」を店員さんに伝えました。店員さんから、赤ちゃんの性別や続柄などを聞かれました。
店員さんは、ベビー用の毛布を持ってきて、「これから寒くなります。小物を一品、いっしょに贈られると見栄えもいいです」とおっしゃいました。
余りにオファーが的確すぎて、僕は驚きました。「いいご提案をいただき、ありがとう」と、店員さんにお礼を言いました。
細谷さんは「上流(Why)」から見なさいと提唱されていますが、結果的にそのとおりになり、功を奏しました。
あちこちの売り場で個々の品物を見て回っていたら、たぶん僕たちは困り果てていたのではないかと思います。
出産祝の事例は比較的簡単なものです。複雑な問題解決の場合も同様で、枝葉の部分(How)から入らず、Whyから考えるべきです。