論文名:謙虚で共感力の高いリーダーに変わる方法
共著者:ジュリー・バッティラーナ(ハーバード・ビジネススクール教授)、ティツィアナ・カシアロ(トロント大学教授)
出典:DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2022年5月号 ダイヤモンド社
発表年:2021年
【あらまし】
著者らは20年にわたり権力の研究を行い、また教鞭を取ってきました。5つの大陸で100人以上にインタビューを実施し、対象者がいかに権力を握り、それを行使しているかに関する調査を行っています。
リーダーの座に就き、権力を手にしたとたん、傲慢になったり、自己中心的に振る舞ったりするケースが多いとのことです。この論文は、謙虚で共感力の高いリーダーに変わるための実践法を紹介しています。
権力にまつわる2つの罠
権力を握ると、傲慢さと自己注目という、油断ならない2つの罠に足を取られやすくなります。そうなれば、自分だけでなく、組織の有効性も損ないかねません。
傲慢さと自己注目がもたらすリスク
成果を上げて評価されてきたリーダーほど、自分を過信するあまり、傲慢になり、意思決定を誤る危険性が高くなります。
人は権力を持てば持つほど、自己注目に陥り、メンバーに注意を払わなくなります。そうなると、メンバーの側も、最善を尽くそうとする意欲や実際の貢献度も低下してしまいます。
よって、リーダーは、謙虚さを身につけて傲慢さを解消するとともに、共感力を養うことで自己注目を抑制しなければなりません。そうすれば、効果的にリーダーシップを発揮できるようになります。
謙虚さを身につける
謙虚になるためには、自分の能力や実績、限界を正しく認識しなければなりません。
リーダーとメンバーの謙虚さを養うには、次のような方策があります。
・お互いに「わからない」と言うことが受け入れられ、むしろ、それが望ましいとされる環境をつくること
・率直に意見を表明できる場を設置し、お互いに相手の発言に耳を傾けること
・成功とは一過性のものだと、確認できるようにすること
・自分の謙虚さを診断し把握すること
あなたの謙虚さを診断する
① 積極的にフィードバックを求める。たとえ批判的な意見でも、積極的に聞こうとする。
② 何か知らないことがあれば、正直に認める。
③ 知識やスキルで他者のほうが秀でていれば、それを認める。
④ 他者の強みに気づく。
⑤ 他者の強みを事あるごとに称賛する。
⑥ 他者の貢献に感謝を示す。
⑦ 他者からすすんで学ぼうとする。
共感力を養う
リーダーは、自分の実力を証明しようと意気込むあまり、自己注目に陥りがちです。
しかし、努力を怠らなければ、他者への気持ちを理解し、共感力が養われます。
リーダーとメンバーの共感力を養うには、次のような方法があります。
・他者の仕事を体験すること
・他者の仕事の話を聞くこと
・相互に関わり合っているという意識を組織の中に浸透させること
・会社の外に出て、社会との関わりを持つこと
以上のようにして謙虚さと共感力を養えば、リーダーはそのリーダーシップを効果的に発揮し、チームを導き、目を見張るような業績を上げることができるでしょう。
【教訓】
「傲慢から謙虚へ」「自己注目から共感力へ」ということが、この論文のテーマです。
傲慢と謙虚は対義語です。自己注目と共感力については、少々調べてみました。
自己注目とは、自分のほうに注意が向いてしまい、他者のことに注意が向かないことです。また、共感力とは、他者の気持ちを察することができ、気持ちの共有ができることです。
ずいぶん以前、仕事の関係で、外部の目上の方にお目にかかる機会がありました。
その方は、立場上、偉そうにしてもいいのにそうはせず、僕と同じ目線でていねいな言葉づかいでお話をうかがいました。また、持参した資料にもじっくりと目を通していただき、コメントをいただきました。
僕も、このような謙虚な人になりたいと思いました。ロールモデルです。
でも、僕は時々、傲慢になったり自己注目になったりします。努力が足りないのか、人徳がないのでしょうか。