将棋の対戦では、勝つ人と負ける人ができます。負けた時はどう振る舞えば良いのでしょうか。
羽生善治さんの著書「大局観」(角川新書 2011年)によると、将棋界には「反省はするが、後悔はしない」という言葉があるそうです。
確かに反省は必要だが、それが済めばいつまでもうじうじと後悔する必要はなく、その経験や体験を自分自身の実力を上げていくうえで必要不可欠なプロセスとして受け止め、消化し、昇華させることが大切なのである。
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉は、この著書でも時々散見され、また、我が国では古くから用いられています。負けた時は、何らかの原因があります。敗因を究明し、反省することが大切です。
羽生さんは、永世竜王の資格を賭けた第21期竜王戦で渡辺明竜王と対戦し、3連勝のあと4連敗して負けた、苦い経験をお持ちです。著者は、竜王戦に敗戦した自分自身に言い聞かせるようにこう述べておられます。
現状と現実を、ひいき目で見るのではなく、あくまでも客観的に、中立的に、冷静に、シビアに、直視する必要がある。
パフォーマンスが低下した多くの野球選手を復活させた野村克也さんは、著書「野村再生工場」(角川ONEテーマ21 2008年)の中で、心に響く言葉を遺しておられます。
大切なのは、失敗を次につなげることなのだ。「失敗」と書いて、私は「せいちょう」と読むことにしている。
また、実業家の柳井正さんは、著書「一勝九敗」(新潮文庫 2006年)の中で、
失敗の経験は身につく学習効果として財産になる。
と述べておられます。
勝負に負けた時、素直な気持ちでよくよく反省する一方、次につながるようにポジティブに考えることが大切なのです。
省みると、僕はどうでしょう。「反省もするし、後悔もする」というところでしょうか。一番良くないのは、「後悔はするが、反省はしない」という振る舞いです。
「反省はするが、後悔はしない」という振る舞いは、将棋界だけではなく、仕事や人生においても大切なのではないでしょうか。