11月の我が家では、孫の七五三と孫の誕生日という二つのイベントがありました。いずれも、食事会を伴い、僕がその費用を負担します。
七五三の際には、プレミアム食事券を買いそびれてしまい、9,000円で美味しい料理をいただいたのに「損をした」という気持ちが強く残りました。
その後、プレミアム食事券の再募集があり、誕生日会の際には13,000円かかりましたが、プレミアム食事券を使うことができました。美味しい料理をいただき、おまけに30%増のプレミアムが付いた食事券を使えたので、「得をした」と喜ぶべきところです。ところが、「七五三」の尾を引いており、今度はプレミアム食事券を使えて「損をしなかった」と安堵した気持ちのほうが強かったです。
ダニエル・カーネマンらは、「人間は得をすることよりも、損をすることに強く反応する」との研究成果をあげました。これを「損失回避性」と呼ぶそうです。
和田秀樹さんの著書「『損』を恐れるから失敗する」(PHP新書 2017年)によると、日本とアメリカでは、接待の目的が違うそうです。
日本では、接待はお得意様に対する「お礼」の意味合いが強いそうです。言い換えると、「仕事を切られたくない」という守りの姿勢が強く、つまり「損をしたくない」「失敗したくない」という接待です。
これに対し、アメリカでは既存のお客様より、これから取引を始めるかもしれないお客様への接待が多いそうです。アメリカでは新規ビジネスのための「投資」が目的であり、つまり「得をしたい」「業績を上げたい」という接待です。
テレビ・コマーシャルなどの広告でも、日本は「損をしたくない」という気持ち、アメリカは「得をしたい」という気持ちが感じられるそうです。
日本では視聴率が高い番組に広告を出し、好感度の高いタレントを使う傾向にあるそうです。万一、広告に伴う売上効果があまりなくでも、言い訳しやすいからです。
一方、アメリカでは、視聴率に関わらず、ターゲット層を絞ってメディアを決め売上を上げるための広告を出す傾向があるそうです。また、必ずしも好感度の高いタレントを出すとも言えないとのことです。無駄な出費はせず、売上を上げるために本当に必要な投資をする考えだと言えます。
「人間は得をすることよりも、損をすることに強く反応する」という理論は、アメリカで実験研究されたものです。しかし、この人間の特性はむしろ日本人のほうが顕著に表れています。
日米とも心理的特性は似ているが、「損をしたくない」という気持ちを「補正」することがアメリカのほうが進んでいると、著者は説明しています。さらに、「損を恐れすぎること」が経済停滞の要因の一つになっていると、著者は主張しています。
著者の論理も勉強になりますが、僕はもう一つ、日米の会社の違いが伝統的にあると考えています。日本では、失敗をしなければ保身できる会社が多いのではないか、アメリカでは、業績を上げないと保身できないのではないかという仮説です。外資系企業では、一定以上の業績を上げないと会社に残れなくなると言ったことを、本で読んだり人に聞いたりしました。
「得をしたい」「業績を上げたい」という精神が、アメリカのほうが一枚うわてのように思います。