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論文を読む:モデルナがワクチン開発で実践したイノベーションの原則

論文名:モデルナがワクチン開発で実践したイノベーションの原則

共著者:ヌーバー・アフェヤン(モデルナ共同創業者兼会長)、ゲイリー・P・ピサノ(ハーバード・ビジネススクール教授)

出典:DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2022年1月号 ダイヤモンド社

発表年:2021年

 

【あらまし】

モデルナは、メッセンジャーRNA(mRNA)を用いた新型コロナワクチンを開発しました。

研究当初の問題意識は、「mRNAを改変して投与することにより、患者自身の体内の細胞を、任意のバイオ医薬を生成する小型工場にすることができたならば」というものでした。当時は誰一人としてこの問題解決に成功しておらず、ブレークスルーイノベーションが必要でした。

「ブレークスルー」とは困難を突破することで、著者らは次のような気づきを得たとのことです。

ブレークスルーは、進化を引き起こす自然界の基本原則に倣った(ならった)、比較的明快なプロセスをもとに生まれる傾向がある

その基本原則には、二つあります。

 さまざまな生命体を生み出す「分散の創出」

  分散は、変異(DNAコードの偶発的な変化)と組み換え(DNAプラグメントの再配列)によって実現します。

② 与えられた環境下で生存・繁殖できる個体を選り抜く「選択圧」

  選択圧とは、特定の形質(長い脚など)が多少なりとも生存に寄与するかどうかを左右する環境要因、たとえば食物や餌をめぐる競争を指します。

ブレークスルーイノベーションは分散の創出や選択圧を含む、知的飛躍、反復的な調査、実験、取捨選択の秩序だった綿密な実践によって生み出されます。

ブレークスルーイノベーションを進めるには、取組んでいる組織の構成員、とりわけリーダー層が、適切なマインドセットと行動様式を身につける必要があります。徹底的な実験と失敗を通した学習を重んじ、誰のアイデアであるかにこだわるよりも、全員の貢献を優先しなければならないのです。

 

【教訓】

新型コロナウイルスが流行する前は、モデルナの知名度は決して高いものではありませんでした。そのため、一夜にしてモデルナが成功を収めたかのような印象があるかもしれません。

しかし、この成功の陰には10年来の取り組みがありました。無数に繰り返してきたプロセスの結晶だったのです。

ブレークスルーイノベーションは、まったくの偶然の産物であるとか、類いまれなる人材のひらめきの賜物であるとか、思われがちですが、実はそうではありません。極めて秩序だったプロセスから生成されるものなのです。

ブレークスルーイノベーションの追求は、技術的・専門的な挑戦であると同時に、リーダーの意識や行動に依存することが多く、リーダーシップの挑戦でもあるのです。

 

coco02hibi9.hateblo.jp