僕は今月初旬に、日帰りの手術を受けました。手術を承諾した際、手術前・手術中・手術後の注意事項の数々を看護師さんから聞きました。とりわけ、術後の身体へのダメージがどの程度なのか、心配になりました。また、半年近く続けなければならない自宅でのセルフケアを無事にやり遂げられるだろうかと、考え込んでしました。そういうことを悩んでいると、寝つきが一時的に非常に悪くなってしまいます。
僕は、デール・カーネギーさんの名著「道は開ける」(創元社文庫版 2016年)をペラペラめくりました。悩んだ時そういうことを僕はよくやります。
目に留まったのが、カーネギーの知り合いの女性、ルシール・ブレイクさんのエピソードです。カーネギーが、コロンビア大学新聞学部で一緒に学んでいた際、彼女から聞いた話です。
彼女はその数年前、アリゾナで忙しい日々を送っていました。ところがある朝、卒倒しました。心臓の病気のためです。医師から「1年間はベッドで絶対安静にしなさい」と言われました。その後回復できるかどうかは、わかりません。
1年間のベッド生活。どうしてこんなことになったのか? もはや再起不能。死ぬかもしれない。彼女は恐怖のとりことなり、悲嘆の涙があふれました。
そんな時、近所に住んでいた画家が、「悲劇だとばかり考えず、前向きに物事を考える」旨を語り励ましてくれました。
毎朝目を覚ますと、彼女は感謝すべきことを考えるように決心しました。痛みがないこと。目が見えること。耳が聞こえること。ラジオから流れる美しい音楽。読書の時間。美味しい食事。友達のことなど。
彼女はすっかり陽気になり、体調は回復しました。その後も彼女は、自分の恵まれていることを数え上げるという習慣を毎朝続けているとのことです。
僕は自分に置き換えて、感謝すべきことを考えました。
悪性腫瘍ではなかったこと。心臓や脳といった命に関わる病気ではなかったこと。ちょっと我慢しなければならないけれど、おおむね普通に日常生活が送れること。妻から励ましやお叱りの言葉を聞くことができること。
「厄介ごとではなく、恵まれているものを数える」ことの大切さを自分自身に言い聞かせ、今まさに体験しているところです。