書名:督促OL修行日記
著者:榎本まみ
出版社:文春文庫
出版年:2015年
この本は、新卒でクレジットカード会社の督促を行う部署に配属された著者が経験した苦労談であり、督促のノウハウ集とも言えます。なお、著書に登場する人物などが特定されないよう、工夫して執筆されたとのことです。
大学卒業のN本さんという女性は、多数の会社に応募してやっとのことで某クレジットカード会社に就職しました。不運にも、最初の配属先は初期延滞段階のお客さんに電話督促を行うコールセンターでした。ヘッドホンを付けて、1時間に60本の電話をしなさいと指示されています。お客さんに怒鳴られる過酷な日々が待ち受けていました。9時から5時で終わる職場ではなく、長時間勤務が日常です。成果が上がらなかったら、今度は上司からお叱りを受けます。
こういう仕事ですからストレスがたまりやすく、社員が次々と辞めていきます。辞めれば人を補充していく、まるで使い捨てのような職場です。
逆境の中、気も弱いN本さんですが、辞めずに仕事をがんばります。上司や先輩から仕事のやり方を教わり、修行のような毎日です。あまり深刻にならない程度に、ときには大げさな表現で、ときには滑稽にストーリーが展開していきます。書名のとおり、「修行日記」と言えましょう。
コールセンターではありませんが、僕も新卒で債権管理の職場に就きました。もう無理かなと悩んだこともありましたが、上司、先輩、同僚らのおかげで担当職務をやり遂げることができました。
ヘッドホンを付けることはないのですが、電話督促のほか、来店面談、訪問活動も行いました。また、入金交渉だけでなく、実態調査を行うことも必要でした。うっかりミスで延滞した場合もあれば、倒産など深刻な事態もあるからです。実態に応じて、いかにして債権全額を回収するかが仕事の目的です。
僕が「遅れた理由は何ですか?」とお客さんに聞いた途端に、先輩から「何かご事情がございましたか?」と柔らかく尋ねなさいと注意を受けました。お客さんを怒らせず、いかにして入金交渉や実態調査を進めるかが、腕の見せ所です。「若いのに、よくこんな厳しい職場でやっているな」と、来店したお客さんから言われたこともありました。
「督促」という言葉は耳慣れない方もいらっしゃると思いますが、債権管理も含めて「督促」は様々な職場で用いられています。たとえば図書館でも、期日までに本が返却されないと担当の方が督促するでしょう。事務職でも期日までに必要書類が提出されないと、督促します。日は当たりにくいけれど、「督促」は誰かがやらなくてはならない仕事だと言えます。