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GDPは「豊かさ」のすべてではない

GDPの伸び率や国民一人当たりGDPのニュースに接して、一喜一憂することがあると思います。元金融トレーダーの田内学さんの著書「お金のむこうに人がいる」(ダイヤモンド社 2021年)を拝読して、GDPが「豊かさ」の経済指標として万能ではないことを知りました。

著者は、「テレビに関する次の選択肢のうち、どれが一番経済成長させてくれるか?」という問いを投げかけています。

A 生産技術を向上させて、大画面のテレビを安く売ること

B 価格は上がるが、テレビに新しい機能をつけること

C 品質管理を徹底して、テレビを壊れにくくすること

Aの「テレビを安く売ること」やCの「テレビを壊れにくくすること」は、消費者にとってたいへん喜ばしく、生活を豊かにします。

しかしながら、Aの結果、付加価値が下がってしまう恐れがあります。また、Cのようにテレビが丈夫になると消費頻度が減少してしまいます。

経済成長させる、言い換えるとGDPを増やす効果が最も期待できるのは、Bのようにして「価格を引き上げる」ことなのです。

電機メーカーなどの企業努力のおかげで、効率良く生産され、低価格で故障もしにくい、高品質のテレビが市場に普及するようになりました。価格が下がり丈夫になると、テレビという製品を販売しやすくなる側面もありますが、必ずしもGDPの拡大に寄与しない恐れがあります。

ほかに指標がないので、GDPは「豊かさ」を表わす経済指標として、とりあえず代用されているにすぎないのです。GDPは万能ではなく、目からウロコが落ちた思いです。