仕事力

心に響く自己啓発

「割れた窓」を放置しない

「壊れ窓理論の経営学」(マイケル・レヴィン著 光文社 2006年)を拝読しました。壊れ窓理論は「割れ窓理論」とも翻訳されます。割れた1枚の窓が修理されずに放置されていたら、誰も注意を払っていないとみなされ、建物の残りの窓も近々に割られてしまうという理論です。割れ窓とは、些細な綻びのことを指しています。

ゴミ箱からゴミがあふれていたり、飲みかけのジュースのボトルがそのまま置かれていたりすると、不快なものです。それこそ、綻びです。

1994年にニューヨーク市長になったルドルフ・ジュリアーニ氏は、地下鉄の落書きを一掃するなど小さな犯罪を取り締まることによって、結果的に凶悪犯罪を減少させ、安心できる街作りに貢献しました。

心理学者の内藤誼人(よしひと)さんは、著書「ビジネス心理学の成功法則100を1冊にまとめてみました」(青春出版社 2022年)で、次のような研究成果を紹介されています。

オーストラリアにあるクイーンズランド工科大学の敷地内で、二つの共用スペースを比べることによって実験研究が行われました。

ひとつの共用スペースには、ゴミ箱の横にシュガースティックのくずをわざと落としておき、テーブルの上には使用済みの紙コップや雑誌を置いておいたのです。もうひとつの共用スペースは、きれいな状態にされていました。

すると、ゴミが散乱した共用スペースにやってきた人は、59%がそこにゴミをそのままにして立ち去りました。きれいな状態の共用スペースでは、ゴミを残していく人が18%でした。この実験によっても、割れ窓理論が検証されたと言えます。

もし綻びが生じたら、どうすればいいのでしょうか。

取るべき行動はただ一つです。見た目を繕ったりせず、修理すべきなのです。ひびの入った窓に粘着テープ貼っても不十分です。割れた窓の印象は何ら変わりません。修理は迅速で完全でなければなりません。

完璧に修理することによって始めて、会社のイメージ、商品のイメージ、ブランドのイメージ、社員のイメージなどが良好に保たれると言えましょう。