書名:鹿男(しかおとこ)あをによし
著者:万城目学(まきめ まなぶ)
出版社:幻冬舎文庫
出版年:2010年
主人公は、東京の大学院研究室に所属する男性研究員です。ちょっとしたトラブルを起こしたこともあり、気分転換のため奈良の女子高の理科教師をやってみてはと、教授から勧められました。高校の2学期だけ、期間限定の臨時教師です。
初めての授業に際し、生徒から適当なことを言われました。
奈良の人間は、鹿に乗るんです
マイカーならぬマイシカが、奈良にはあるとのこと。僕はよろけそうになりました。
主人公が奈良公園付近をぶらついていると、今度は雌鹿がおじさんの声で話しかけてきます。
さあ、神無月だ-出番だよ、先生
小説だからフィクションが存在するのは承知の上ですが、これはリアリティがなさすぎるのではないかと、大いに戸惑いました。この小説を読み進めて教訓は得られるだろうかと、心配にもなりました。
偶然にも、この著書を読み始めたのは神無月でした。数週間ほど費やして霜月に読了しました。後半部分は状況が激しく変化し邪馬台国の卑弥呼の伝説まで絡んできて、どっぷりと万城目ワールドにつかってしまいました。
雌鹿から、世界を守るためと無理難題を命じられ、主人公は懸命に動き回ります。勇気を奮って、関係者に奇妙な質問を行い、事実関係を追究していきます。剣道部の顧問でもある主人公は、弱小チームながらスポーツ大会で優勝もします。すべては雌鹿が提起した難題を解決するためです。
主人公は多くの人々に助けられました。最後は、物語にばらまかれた色々な伏線が回収され、帰京する新幹線の中でハッピーエンドとなります。
その後主人公は、東京の研究室に無事戻れたのでしょうか。奈良で活躍した経験を活かし、研究員として社会のために研究成果をあげてもらいたいものです。