吉野家元会長の阿部修仁(あべ しゅうじ)さんと経済学者の伊藤元重さんとの対談が記された「吉野家の経済学」(日経ビジネス人文庫 2002年)を拝読しました。
もともと個人商店であった吉野家は、「うまい、安い、早い」を店の特徴にして、全国に200店舗を展開するまでに成長しました。
ところが、店舗数拡大一辺倒がたたり、その2年後、1980年に倒産(会社更生)しました。会社更生であるため営業は継続していますが、店舗閉鎖など、大規模なリストラが行われました。
失敗の原因には、次のようなことが挙げられます。
・急激に店舗を増やした
・それに伴い常に資金繰りが忙しい
・店舗数の増加の割に、店長などの人材が十分育っていない
・牛肉などの材料費が高騰した
・品質を落としたことにより味がまずくなった
・そういう状況の中で値上げをしてしまった
吉野家は従業員が将来に希望を持てない更生会社になってしまいました。ですが、逆境を乗り越え、1987年には債務を完済し、1990年には株式公開を果たしました。
このV字回復の立役者が、阿部修仁さんです。彼は、「絶対成功する事業はないが、絶対失敗する条件は学習した。失敗の要素がそろったときは、手を出さない」という趣旨のことを述べられています。
吉野家は、安全性を考慮した経営に転換しました。復活を実現できたのは、失敗を前向きに研究し糧にしたところにあると思います。