ブリジストンでCEOを務められた荒川詔四(あらかわ しょうし)さんの著書「臆病な経営者こそ『最強』である。」(ダイヤモンド社 2024年)を拝読しました。この著書は、若手社員時代から幾度も苦難を経験された著者の実践に基づく経営書です。
「臆病」というより、著者の謙虚さや思慮深さが勉強になりました。「経営学者でもない私に、その詳細を論じる能力はありません」と語られる場面がありました.。こんな謙虚な本は初めてです。この本は、企業経営者だけでなく、すべてのビジネスパーソンが読んでおくと参考になること請け合いです。
著書の論点はいくつもあるのですが、ここでは、不祥事対応について著者の考え方や実践方法を述べたいと思います。
著者がCEOを務めていたとき、こんな経験をされたそうです。
ブリジストンのある製品の海外販売において、ひとりの担当者が国際的なカルテルに関与し、販売手数料の一部が賄賂として渡ったという疑惑が浮上しました。
内部調査はもちろん実施していますが、早期に社外への公表も必要でした。「CEOが記者会見の矢面に立つ必要がない」と言う役員もいましたが、著者はシンプルな原理原則に戻って思案しました。
「逃げない」
「正直である」
「嘘を言わない」
「謝るべきは謝る」
「解決に向けて愚直に行動する」
逃げたらトラブルが大きくなると考え、著者は自分が記者会見に出ることを決めました。会見の場では、記者から鋭い質問も飛びました。著者は極度の緊張で大汗をかきましたが、シンプルに原理原則に基づき、包み隠さずすべて本当のことを伝え、謝罪しました。
その後の報道では、耳の痛い指摘もありましたが、強く非難する論調は見当たりませんでした。もちろん、問題解決に至るまで長期間を要しましたが、初動対応が功を奏しました。
しかしながら一般的に、不祥事対応に失敗する会社が跡を絶ちません。経営トップは不祥事対応の「いろは」をたいていは学んでいます。けれども、知識として持っているだけなので、いざというときには役に立たないのではないかと、著者は述べています。いざ不祥事が勃発したら、焦る、逃げる、恐れるといった心情が先に立って平常心ではいられなくなるからです。
著者の場合、若手社員の頃からトラブルに身を置くことが多くありました。原理原則に基づく対応を怠らなければ、トラブルは必ず解決するという経験を積んでこられたのです。
だから、社員にはトラブルの対応を経験することと、普段からコンプライアンスに則った組織作りに努めることが重要だと考えられているようです。
世の中には、不祥事の対応に失敗する組織が多いのが実情です。その対応には、経営トップが率先して、シンプルな原理原則を実行すること、常日頃からクリーンな組織作りを心がけることが大切なのですね。