テレビプロデューサーなどを務めておられる佐久間宣行(さくま のぶゆき)さんの著書「佐久間宣行のずるい仕事術」(ダイヤモンド社 2022年)を拝読しました。書名の「ずるい」は、決して悪い意味ではありません。僕が超訳的に解釈すると、「心にちょっとだけ余裕を持って工夫して臨む」ことかなあと、思います。
著者はテレビ東京に入社しました。入社1年目に、彼はドラマのAD(アシスタント・ディレクター)を務めました。「AD」という仕事は、誰にでもできる雑用の仕事でつまらないにも関わらず、体力的・精神的に疲れる激務だと、彼は思い込んでいました。
ある時監督から、明日の撮影で使う「サッカー部の女子マネージャーの手づくり弁当」を用意せよと、命じられました。当該弁当はドラマの小道具で、飾りにしか過ぎません。それを作ることは面倒な雑用です。また、監督の命令口調にも内心、イラッとしました。
著者は、学生時代にアルバイトをしていた居酒屋の厨房を夜中に借りて、弁当を作りはじめます。とはいえ、女子高生がどんな弁当を作るのか、思案に暮れます。
ふとアイデアを思いつきました。「サッカー部だから、サッカーボールのようなおにぎりを作ってはどうか」と。
そこで、海苔を六角形に切り抜いて、丸いおにぎりに貼り付けました。ウィンナーや玉子焼きなどのおかずも、女子高生らしく工夫しようと、手間と時間を費やしました。
いつの間にか、朝の5時になっています。作った弁当を持ってロケ現場に直行しました。
弁当を現場で見せると、監督がこう言いました。
「ちょっと台本を変えよう。この弁当をストーリーのメインにしたい」
雑用だと思っていたのに大切な仕事だとわかり、著者は感動しました。
これが「仕事の楽しさ」を味わった、はじめての瞬間だったと思う
と、振り返っておられます。
雑用を与えられても、自分なりに工夫をすることによって成果につながる場合があります。単なる「雑用」で終わらせるのか、「楽しい仕事」に変換するのか、それは、仕事に対する取り組み姿勢の違いではないでしょうか。