未来食堂の店主を務める小林せかいさんの著書「やりたいことがある人は未来食堂に来てください」(祥伝社 2017年)を拝読しました。著者は、東京工業大学理学部数学科を卒業後、IBM、クックパッドで6年半エンジニアとして勤めました。退職後、1年4か月の飲食店修行を経て、東京・神保町にてカウンター12席の「未来食堂」という定食屋さんを開業しました。2015年オープンですので、業歴10年くらいになります。
著書を拝読して、「小林せかい」というお名前は本名で、女性だということを知りました。異色の経歴を持つ著者は、未来食堂でもユニークな経営のやり方をなさっておられます。多くのマスコミで報道されたそうですが、僕はこの著書を読むまで知りませんでした。
・定食メニューは、本当に毎日変わる「日替わり定食」(900円 ご飯のおかわり自由)のみです。週末に来店したお客さんと相談して、翌週の定食の料理を決めるそうです。
・「あつらえ」…お客さんが店にある食材から2種類選んで、小鉢料理(400円)をオーダーできます。あつらえの材料は、特別に仕入れるのではなく、店にあるものを使っているそうです。
・「まかない」…50分間、厨房でお手伝いしてもらうと、一食無料になります。一食無料にしても料理の原価を考慮すると、安いコストだとおっしゃっています。ちなみに、常雇いの従業員は一人もいません。
・「ただめし」…店の入口にただめし券を貼っており、この券を使えば誰でも一食無料で食べることができます。前述のまかないをした誰かが食べる代わりに置いていったのが、ただめし券です。
・「さしいれ」…お客さんは、店に飲み物を持ち込みできます。その代わり、飲み物の半分を店に寄付してもらいます。寄付されてカウンターに置いてある飲み物は、自由に飲むことができます。さしいれの飲み物以外に有料の日本酒を一種類、店に常備しているそうです。
ほかにもユニークな点はありますが、店のオペレーションとして特徴的なのは以上でしょう。
無理な努力をせず、無駄な時間を使わず、無駄な材料を使わないようにしているそうです。このようなやり方で黒字経営を続けているとのことです。
ユニークな取り組みを進める著者ですが、「変わるもの」と「変えないもの」があると、おっしゃっています。変わるものは形態です。変えないものは、「誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所」という理念です。この理念は熟慮されてつくられたものです。色々創意工夫をされても、理念というブレない軸で統一されているのだと、僕は思います。
飲食店関係者だけでなく、何か新しいことをはじめたい人は、未来食堂を訪ねると、創意工夫のヒントを得られるかもしれませんね。