科学的管理法というと、作業の動作を綿密に観察する、ストップウォッチで動作の時間を計測する、そういうイメージが持たれる。動作研究や時間研究を厳密に行うことは、科学的管理法のあり方として、半分正しい。
フレデリック・W・テイラー著「新訳 科学的管理法」(ダイヤモンド社 2009年)は、200ページに満たない読みやすい古典である。この著書を読むと、科学的管理法の別の側面が存在することがわかる。
1 従来は現場の働き手が優秀な成果を上げても、賃金の単価を雇用主は意図的に下げてしまう。だから、働き手はやる気をなくしてしまうのである。
科学的管理法では、働き手に成果の目標が与えられるが、雇用主も賃金の約束を守らなければならない。だから、働き手は目標を達成しようとする。結果的に能率が向上する。
2 従来は作業の段取りから道具の用意まで、作業に関することはすべて働き手の責任であった。個々の働き手の腕前しだいなのだ。
科学的管理法では、現場の働き手に任せ切りにしてきた仕事の多くを、雇用主側であるマネジャーが引き取り、働き手とマネジャーが二人三脚で責任を負うようになった。
3 従来のマネジャーは、高圧的な態度を取ったり強い調子で発破をかけたりした。あるいは、何の手助けもせず、働き手の工夫にすべてを委ね、うまくいかなかったら働き手に責任を負わせた。
科学的管理法の下では、一人ひとりの働き手に対して、マネジャーが日常的に助言を与え、親身になって手を差しのべる。仮に任務を果たせなかった働き手がいた場合は、有能な上司をつけて作業の望ましいやり方を示すのみならず、指導や後押し、励ましなどを行うこととした。それでもなおかつ適性がない場合は、他の部署に配置転換した。
4 従来、健康管理は働き手が自ら行うこととされた。
科学的管理法の下では、働き手が何年もの長い期間働いても、健康を損なわないように配慮された。作業を急ぐあまり身体を壊すという事態は言語道断なのだ。
雇用主と最前線の働き手が、密接に協力し合うことこそ、科学的管理法の真髄である。雇用主に繁栄をもたらし、かつ、働き手にも豊かさを届けるというのが、科学的管理法なのだ。
その後、新しい管理手法が次々と考案されている。けれども、経営学の古典である「科学的管理法」という著書は、原典に当たることの大切さを教えてくれる良書である。