書名:くもをさがす
著者:西加奈子
出版社:河出書房新社
出版年:2023年
直木賞作家である著者は、結婚し子供ができてからカナダのバンクーバーに移住した。2021年、新型コロナウイルスのパンデミックのさなか、移住先で乳がんを発症した。この本は、8か月におよぶ著者の闘病記である。小説ではない。
発症がわかったきっかけは、クモに噛まれた(可能性がある)ことだ。病院に行って医師の診察を受け「ほかに聞くことは?」と問われ、たまたま「胸にしこりがある」と言ったことから乳がんの検査を進める段階に入った。
コロナ禍であり、日本で治療することが難しかった。当時は、入国者に対するコロナの検査や長い隔離期間があり、帰国するのがギャンブルであった。
バンクーバーで専門医による診察を受けるのに数か月を要した。カナダの医療体制や英語によるコミュニケーションの問題があった。英語のできる友人が病院に電話交渉して助けてくれた。ようやく治療を進めることができた。がん判明当初、2.5センチだったしこりが4.5センチに拡大した。
ジリジリとした焦燥感を抱きながら、僕は本を読み進めた。外国でコロナ禍でがんを患うとは大いなる不運であり、僕には耐え難いことだ。
著者は、抗がん剤投与、摘出手術、放射線治療と、過酷な治療を受けた。治療の間、自身がコロナに感染したり、子供やペットの猫まで体調を崩したりと、二重三重の困難に直面した。だが、著者は、自分を外側から客観的に見つめ、冷静な筆致で闘病の記録や感じたことを綴っている。
優秀な医療従事者に恵まれた。多くの友人の支えも大きかった。著者はがん治療から生還した。
焦らず諦めず、闘病したことが幸いしたのだと、僕は思う。大病を患ったときは、身体だけでなく、メンタル面のケアも大切だと、つくづく感じた。