「人は話し方が9割」で有名な永松茂久さんの著書「喜ばれる人になりなさい」(すばる舎 2021年)を拝読しました。この著書は、ご家族やお仲間とともに、実業家として歩まれた道筋を記された自叙伝です。ビジネスや人生に関する教訓が盛り沢山です。
著者は、東京で出版社勤務、大手たこ焼き店勤務を経て、故郷に帰りました。故郷でたこ焼きの行商を始め、次は飲食店経営に取り組みました。その後東京に拠点を移し、新たな事業活動を展開しておられます。
故郷の飲食店が繁盛したきっかけは、バースデーイベントを行ったことです。イベント件数は、1店舗で年間1500件です。うるさいと来なくなるお客さんも一部にはいましたが、多くのお客さんに感動をもたらしました。
そのイベントは、こんなふうに行われました。
突然店内の電気を消し、トランペットで「ハッピーバースデー」が奏でられ、キッチンに据え付けてある4メートルの鉄板から炎が吹き上がる。そして手作りのケーキが当人のもとに運ばれる。
(中略)
その間、キッチンの作業はすべてストップ。もちろん、その間はお客さまのオーダーも受けない。店内全体がその人のことを喜んでお祝いすることに集中する。
こういうイベントは、普通の飲食店では効率が悪くてやりません。著者たちの店では、非効率だからこそ感動をもたらすのだと考え、どうしたらお客さんに喜んでもらえるか、工夫を凝らしたそうです。
口コミで遠方からもお客さんが来るようになります。お客さんの要望でウェディングもやりました。たまたまウェディングに参列していた出版社の編集長から声をかけられ、本を書くチャンスが到来します。経営や人材育成に関する講演も行うようになりました。
世の中では今、生産性向上が叫ばれ効率化のスピードがどんどん速くなっています。ですが、みんなと違う方向として、非効率が感動をもたらす場合があることを覚えておくと、何かの役に立つかもしれません。