仕事力

心に響く自己啓発

「片足で挑む山嶺」を読んで

書名:片足で挑む(いどむ)山嶺(さんれい)

著者:桑村雅治(アルピニスト)

出版社:幻冬舎

出版年:2024年

 

著者は8歳のとき骨肉腫を患い、治療のため左足の大腿部の付け根近くから切断した。この本は、著者が片足で日本百名山の全登頂を目標とし、現在進行形で取り組んでいる記録である。ポジティブな姿勢で、淡々とした筆致で記されたいる。

運動が得意なこともあって、左足切断後も自転車に乗ったり野球を楽しんだりと、ごく普通の小学校生活を送った。社会人となってからはバトミントン、水泳、スキー、自転車に熱中し、ついには鉄人レースと言われるトライアスロンの大会に出場するようになる。

ところが2012年、C型肝炎発症。治療ためトライアスロンを引退。治療薬の副作用から糖尿病も併発。これらを寛解させ、前人未到の片足での日本百名山踏破を志す。

義足ではなく、ロフストランド・クラッチ(通称クラッチ)という金属製の杖を用いて登る。さらに、必要な荷物はすべて自分で背負い、人の手は借りない単独踏破にこだわる。ただし、屋久島は奥様と楽しむためにガイドを雇った。また、大キレットという難所が立ちはだかる山は、奥様の強い要望でガイドを雇った。

片足の登山家をガイドするほうも容易ではない。大キレットがある山では、たった一人の方しかガイド志望者がいなかった。しかも低山で試験した上で、ガイドを引き受けてくれたのだ。

日本では、山を数えるのに「座」という単位を使う。これは古来、登山は信仰と結びついていたので、山頂は神が座る場所と考えられていたからだ。

61歳になった著者は、70座近く登頂した。全登頂にあと「もう30座しかない」ではなく、「まだ30座ある」という心境だそうだ。

難所が多かった劔岳では、「焦らない」「気を緩めない」「無理をしない」、これら3要素が必要だと述べられている。百名山はそれぞれ違う。1座1座、気を引き締めて登らないといけない。

苦労して山頂に登ったときの眺望に魅了されたそうだ。また、登頂を通じて多くの人との出会いも楽しみだと、語られている。

片足しかないというハンディがあっても、ここまでできるのだと、僕は感銘を受けた。単なる登山の本ではない。人生の壁にぶつかったときも、勇気づけてくれる一冊である。