仕事力

心に響く自己啓発

「労働Gメンが来る!」を読んで

書名:労働Gメンが来る!

著者:上野歩

出版社:光文社文庫

出版年:2021年

 

題名の労働Gメンというのは、労働基準監督官のことを指しています。この著書は、銀行を退職後、新任で労基署に入職した女性労働基準監督官の約1年間の物語です。労基署における業界用語や内部事情も垣間見える本です。

主人公は、数々の労働問題に遭遇します。タイムカード不正操作による残業代未払い、資金繰り悪化による給料未払い、安全装置を解除したプレス加工での労働災害、労災かくし、パワハラ、セクハラ、通勤災害、育休問題、テレワーク問題、等々。話し合いだけではなく、強制捜査も経験します。

労働問題は、勤務態度が悪い労働者に起因するものもありますが、経営者のエゴや配慮不足に起因するものが多いようです。

労働者は真面目に働かなくてはなりません。一方、経営者は従業員の人生を左右する立場にあります。従業員を大切にするためには、労働法令を守ることが最低限の義務です。この義務を果たせないなら、従業員を雇う資格がないと言えます。

物語の中で労基署が行った強制捜査の結果、その対象となった会社が倒産し、経営者の家族は一家心中したという事案が登場しました。そもそも何が原因だったのか、それは労災かくしの発覚でした。クリーンなイメージから一転、労災かくしが世間に広まり、ブランド価値が低下し会社は倒産。経営者家族はいじめにあいました。

コンプライアンスが重要です。従業員を守るためだけでなく、企業防衛のためにも不可欠です。労働問題以外でも、材料やデータの偽装、隠蔽など、コンプライアンスを守らない不祥事が報道されます。そういう不祥事を起こすと、企業は事業継続が困難な境遇に直面します。コンプライアンスを守る要となるのは、何と言っても経営陣だと思います。法令で制約をかけるだけでなく、経営者自身の自覚が大いに重要でしょう。