仕事力

心に響く自己啓発

「そして、バトンは渡された」を読んで

書名:そして、バトンは渡された

著者:瀬尾まいこ

出版社:文藝春秋

出版年:2018年

 

主人公の森宮優子は、生みの親、育ての親を含めて父親が3人、母親が2人います。名字も、水戸、田中、泉ケ原、森宮と変わりました。親戚を転々とすることは考えやすいですが、そうではなくて、血縁関係のない親たちに育ててもらったのです。変遷の発端は、実の母親と死別し、ブラジルに転勤した実の父についていかず、日本で継母と2人で暮らしたことです。

愛情のバトンが次々に手渡され、親たちのそれぞれの流儀で、優子は大切に育てられました。だから、第1章の冒頭で優子は、こう述べています。

困った。全然不幸ではないのだ。

優子の結婚式の当日に、13年ぶりに実の父と再会しました。優子が小学5年で別れて以来の再会です。このときの実父の言動に心を打たれました。

「ああ、すっかり大きくなって」とまっすぐに涙を落とした。

そして、最後の親、森宮壮介から新郎に式場で愛情のバトンが渡されます。

 

読み進めると、優子と、そして彼女に接する人たちの暖かさを感じる物語です。また、食事をするシーンがたびたび登場するのも、この物語の特徴です。料理やデザートの描写が細やかで、色々な種類の餃子など、いかにも美味しそうでした。僕の個人的な好みですが、○将の餃子をいっぱい食べたいな、甘い小豆煮(関東ではぜんざい、関西ではかめやまと呼ばれています)も多いに味わいたいなと思いながら、この本を読んでいきました。

優子の親たちは、彼女に愛情を注ぐことで生きがいを感じていました。また、それが自分の務めだとも、当然のように考えていました。適度な距離感を保ちながら、血がつながっていなくても愛することができるのです。

 

僕は人生で幾度か、大いに困ったことがありました。そのとき踏ん張れたのは、血のつながった子供、そして血のつながっていない妻がいたおかげです。この本を読み終えてから、妻と食事をした際、夫婦でももっと思いやりをもって接しないといけないと、ちょっと緊張してしまいました。