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「千両みかん」とは?

「千両みかん」は、江戸時代の大店(おおだな)の番頭が夏の暑いさなかに冬のみかんを探し求めるという古典落語です。

若旦那は、今にもどうにかなってしまうような病気に苦しんでいました。

番頭が若旦那から、みかんが食べたくてたまらない気の病だということを聞き出しました。みかんを探すのに番頭は苦労しましたが、ある果物問屋で1個だけ見つかりました。ただし、千両で譲るとのことでした。

大店の主人は、息子の命が助かるなら安いと言い、番頭にみかんを千両で買わせました。

みかんの皮をむくと、10房ありました。若旦那は7房食べて、残りの3房を両親と番頭が分けて食べるようにと、番頭に渡しました。

10房で1000両だから3房なら300両が手元にあると計算し、番頭がみかん3房を持ち逃げした場面で落ちとなります。

これは、「考え落ち」の噺です。息子の命がかかっているという特殊な事情があったため、みかん1個(10房)千両の値段で売買が成立しました。しかしよく考えたら、いくら夏には珍しい果物だとは言え、3房のみかんを300両では換金できないでしょう。番頭は、大店での地位とのれん分けなどの利益を棒に振って、悪いことをしてしまいました。

桂米朝さんは、著書「米朝落語全集増補改訂版 第四巻」(創元社 2014年)で、千両みかんという落語について次のように述べられています。

この落語は、そもそも夏場にみかんを食べたいということから、死ぬの生きるのという病気になるといった、極めて不自然な、無理な設定が根本になっています。

この不自然さ、無理な設定をお客さんに感じさせないように、スムーズに噺を進めていくことが大事だとのことです。噺家らしい解説を拝読しました。