書名:交通誘導員ヨレヨレ日記
著者:柏耕一(かしわ こういち)
出版社:三五館シンシャ、(発売)フォレスト出版
出版年:2019年
道路や建物の工事があちこちで行われ、通行止めや片側通行になっていると、通行する側から見ると「またか!」とちょっといらつくことがあります。
しかし、交通誘導を行う立場から見たら、情景が変わります。著者は、交通誘導員(警備員)として勤めています。執筆当時73歳、警備員生活2年半です。過去には編集プロダクションを経営していましたが、会社清算した経歴の持ち主です。この本は、取材ではなく、生活のため実体験した内容が著されています。
交通誘導は路上での仕事で、勝手に現場を離れることもできず、僕は真っ先にトイレの不自由さを思い浮かべました。また、暑い日、寒い日、雨の日などの仕事だからたいへんそうだという印象を持っています。しかし、トイレや天気の問題だけではないのです。
この仕事は強制力がなく、いわば「お願いのサービス業」です。警察官が行う交通整理とは違います。また、不特定多数の人々が日によって違った現場に集まって仕事を進めます。だから、人間関係でのトラブルが起こりやすい職業です。工事現場の監督や作業員、通行人や車のドライバー、さらには警備会社の同僚や上司から、時には暴言を浴びせられたり、嘘をつかれたり理不尽な思いをすることがあるそうです。
仕事を進めるには、体力だけでなく、気配りや注意力、責任感なども必要です。とくに、トラブルを避けるためにコミュニケーション力が大切だと述べています。
交通量が多くて忙しい日は、まさに「ヨレヨレ」になって帰宅するそうです。けれども、著者は「警備員だけでなく、どの仕事もたいへんだ」と述べています。
高齢の警備員が多いそうです。高齢になっても元気に働くことができたら、喜ばしいことだと思います。