仕事力

心に響く自己啓発

値決めの不思議?

ロバート・B・チャルディーニさんの名著「影響力の武器 第二版」(誠信書房 2007年)*1の第1章は、宝石店の話から始まります。

店のオーナーは、値段の割に質が良いのに、トルコ石がなかなか売れずに困っていました。トルコ石を陳列ケースの目立つ所に移したり、店員にもっとその品をお勧めするよう指示したりしましたが、一向に売れませんでした。

仕入れの出張に行く前の晩、オーナーは投げやりになって「その陳列ケースの商品は全部、値段に1/2を掛けておくように」という殴り書きのメモを、店の主任に残していきました。

オーナーは数日後、店に戻りケースの宝石が売りつくされたのを見ても、当初は驚きませんでした。しかし、メモを受け取った主任が「1/2」を「2」と読み間違えて、商品が2倍の値段で売れてしまったのを知った時、オーナーは仰天しました。

なぜ、このような僥倖(ぎょうこう)が起こったのでしょうか。

来店客の多くは、宝石について大した見識がありませんでした。顧客にとっては値段が品質の善し悪しを決める情報になっていました。値段が上がったことが品質の良い宝石を求める気持ちを刺激して、結果的に購買を促進したのでしょう。

同様の事例として、スコッチウイスキー「シーバス・リーガル」の販売戦略が述べられています。当該製品の販売価格を競合ブランドより高く設定したところ、飛躍的に販売実績が伸びたとのことです。

僕は先日、チューブ入りの歯磨き粉を買いに行きました。ドラッグストアでは、激安のものから相当高いものまで品揃えをしていました。テレビCMで知り得たブランドで、歯周病予防に効果があるというちょっとだけ高い歯磨き粉を選びました。やはり、値段が品質を判断する基準になっている点は否めません。

安ければ売れるというものでもなく、企業にとって値決めは難しく重要な要素でしょう。逆に、消費者は値段だけで判断せず、安くて良いものを求める、賢い買い物をしたいものですね。

*1:「影響力の武器 第三版」が出版されています。