みずほリサーチ&テクノロジーズ著「経済がわかる論点50 2023」(東洋経済新報社 2022年)によると、「心理的安全性」とは次のことを指します。
「率直に発言することや、懸念・疑問・アイデアを話すことへの不安や恐れを感じない状態」
この心理的安全性が高まると、組織において知識やアイデアの共有が進んだり、ミスや失敗を迅速に報告したりする社風が形成されます。また、わからないことがあれば、率直に周囲に尋ねることができる風土になります。
ミスや失敗が容認されるなどとは言っても、心理的安全性が高い組織は、「ぬるま湯」的組織とはまったく異なります。ぬるま湯的組織は、緊張感がなく、ただ居心地がいいだけの馴れ合いの組織です。これでは、新しい知識やアイデアの共有などはできません。
心理的安全性が低い職場おいては、対人リスクとして「無知だと思われる不安」「無能だと思われる不安」「ネガティブだと思われる不安」「邪魔をする人だ思われる不安」が存在すると言われています。このような不安を抱えた状態では、たとえば、アイデア発想のツールとしてブレーンストーミングを活用しても、効果は限定的です。なぜなら、一部の人のアイデアに他のメンバーが追随し、違ったアイデアが発言されないからです。
僕の経験では、経営者の意向を踏まえた意見を発言する人が「できる人物」とみなされ、経営者の考えに反した意見を発言すると「要注意人物」とみなされることが多かったようです。心理的安全性が高いとは言えません。
心理的安全性を高めるために、「この職場なら、率直に話しても大丈夫、本音でものを言えるだろう」という人間関係を醸成していく必要があります。ただし、何を言っても大丈夫だと誤解されて、ぬるま湯的組織になっては意味がありません。
多種多様な意見を聞いて企業経営を進めることは、今後ますます重要になると思われます。その際、組織としてしっかりとした軸を固めて、ぬるま湯的組織にならないようにして、心理的安全性を高めていくことが重要です。