仕事力

心に響く自己啓発

「羊と鋼の森」を読んで

書名:羊と鋼の森

著者:宮下奈都(みやした なつ)

出版社:文春文庫

出版年:2018年

 

主人公は北海道の山間部で生まれ育った青年です。高校2年の時、たまたまピアノの調律作業の素晴らしさを目の当たりにして、ピアノ調律師に魅せられました。高校卒業後、本州の専門学校で調律の基礎を学び、北海道のピアノ店に調律師の見習いとして就職します。

そのピアノ店は、調律の仕事に挫折して退職した社員の穴埋めのため募集していた、社員10人程度の会社でした。高校生の時初めて接したピアノの調律。その調律を行った優秀な先輩調律師がいる店で、その先輩が主人公を社長に推薦してくれたのでした。

羊と鋼の森」という書名と調律師はどういう関係があるのでしょうか。羊の毛のフェルトに覆われたハンマーで鋼の弦をたたくことによって、ピアノは音が出ます。また、ピアノは松の木材でできており、森をイメージできます。多くのハンマーや弦などのパーツがピアノに搭載されており、あたかも森のようです。そういうところから書名にされたものです。

北海道の森は深く、暗くなると迷ってしまいます。同様に調律師の仕事も奥が深く、基礎を学んだだけでは不十分です。修行も簡単ではなく、ともすれば道に迷いそうになります。

主人公は先輩たちに同行して学びました。主人公は自分には才能がないのではないかと、不安に思います。経験、訓練、努力、知恵、機転、根気、そして情熱で、才能がない分を置き換えようと考えます。

物語の最後のほうで、主人公はピアノ発表会での調律を一人でやり遂げます。主人公は調律の森に入り込み、成長途上にあります。

ピアノというと、演奏することをイメージするのが普通ですが、その裏方である調律もまた、非常に奥深いことを知りました。

また、僕が初めて入社した頃の感覚が蘇りました。あのもどかしさ、歯がゆさ、不安いっぱいの気持ち。仕事を始めた主人公の気持ちに多いに共感できました。