仕事力

心に響く自己啓発

リスキリングは、余裕を持って独学する方法もある

最近、社会人の学び直しのことを「リスキリング」と呼び、注目されるようになった。僕は、柳川範之さんの著書「東大教授がゆるっと教える独学リスキリング入門」(中央公論新社 2024年)を拝読した。独学でのリスキリングのやり方を指南してくれる本だ。

著者はユニークな学歴の持ち主だ。中学校卒業後、父親の転勤に伴いブラジルへ移住した。ブラジルの高校には通わず、独学で大検(「大学入学資格検定」の略称、現在は「高等学校卒業程度認定試験」に制度変更された)の勉強に取り組んだ。父親の勧めもあり、公認会計士の試験勉強にも並行して取り組んだらしい。

無事、大検に合格し、今度は通信教育課程の慶應義塾大学経済学部に入学した。入学するのは比較的簡単だが、卒業するのはかなり難しいらしい。再び父親の転勤により、シンガポールに移住。シンガポールでの独学生活が始まった。

経済学をもっと学びたいと決意し、公認会計士の勉強を中止。大学卒業後、東京大学大学院経済学研究科博士課程を修了するに至る。経済学者となり、東京大学で経済学を教える教授になられた。

 

著者は、独学によるリスキリングのあり方について、独自の見解を持っておられる。そのご見解を、僕は三点にまとめてみた。

(あり方1)

AIやIT技術が進歩している昨今においては、「物知り」であることはさほど意味がない。もっと大事なのは、「今持っている知識を活用する力」だ。だから、これから必要とされる勉強は、「知識の吸収」に力を注ぐのではなく、「考える力の養成だ」、「今までの発想を切り替えることだ」と力説されている。

(あり方2)

勉強計画を達成しようと「がんばりすぎないこと」。苦しんで勉強しても継続できない。独学のメリットを生かし、楽しみながら「自分のペースでやる」ことだ。興味のあることには時間をかければいい。逆に、ときどき立ち止まったり休んだりしてもいい。ゆるく考えることを推奨されている。

(あり方3)

ひとまず「仮の目標」を立てること。著者は公認会計士を仮の目標となさった。「ほかにいくらでも道がある」とゆったり考えることだ。リスキリングのおすすめは、「スキルの斜め展開」だ。「タテ」の展開は、今までのスキルをそのまま活かしていくこと。「ヨコ」の展開は、まったく別のことに手をつけること。自分の実務経験を「少し斜め」に広げることによって道が開けるのではないかと、示唆されている。

 

独学のデメリットとして「続けにくい」ことがあげられる。このデメリットを逆に考えると、リスキリングに着手するのも、撤退するのもハードルが低いと言える。厳格なPDCAを回さず、独学で余裕を持ってトライ・アンド・エラーを繰り返し、リスキリングを試みるのもありかなと、僕は思う。