仕事力

心に響く自己啓発

リスクを減らす秘訣とは?

第1次南極越冬隊長を務められた西堀栄三郎さんは、著書「石橋を叩けば渡れない 新版」(生産性出版 1999年)の中で、「準備や計画に完全無欠はあり得ない」と述べておられます。やはり、南極だけに難局だったようです。

リスクを減らすためには準備や計画を怠ってはいけないのですが、完全無欠は絶対ない。未知のことに挑戦するわけですから、必ず思いもよらないことが起こるに決まっていると述べています。こわいのは、準備や計画が完全無欠であると思っている心です。

 

南極は極寒ですので、基地の建物に断熱材を多く用いました。けれども、雪が建物を埋めて断熱してくれるので、さほど断熱材は要らないことがわかりました。このように良いほうへの予想外もありますが、悪いほうへの予想外もあります。

臨機応変の処置をとる覚悟、あわてふためかない心の準備が必要だと説いています。

南極への出発の日、何か忘れ物がいっぱいあるような気がしたそうです。動物園のクマみたいに部屋の中を、あっちへうろうろ、こっちへうろうろとしているうちに、ハッと気がつきました。「創意工夫」を持って行けばいいと。これから先は、ひたすら創意工夫に頼るしかないと。

 

越冬中のトラブルの一つを紹介します。

突然、雪上車がガクンと止まりました。調べてみると、ナットが飛んでなくなって、キャタピラが外れかかっていました。外れたナットをあっちこっち探しましたが、見当たりません。

そこで、ほかの要らないナットを見つけました。しかし、シャフトにはめてみたらガバガバです。ナットの補修をできないだろうか。トーチランプとハンダを見つけました。ハンダでナットの隙間を埋めることにチャレンジし、一応成功しました。

隊員がお祝いにと、紅茶を持ってきました。「その紅茶飲んだらいかん」と、西堀さんは言いました。紅茶に雪をいっぱいかき混ぜてお粥みたいにして、先ほど修繕したナットのところにペチャペチャへばりつけました。たちまちパッと凍りつき、まるでコンクリートで固めたみたいにカチンカチンになりました。

これが創意工夫の一つです。

 

極限状態の中での創意工夫、冷静沈着でないと発揮できません。また、経験と知識と技術とカンも、誰でも持ち合わせているものではありません。

リスクを減らす秘訣とは何か。徹底した準備と計画。しかし、それは完全無欠ではないという覚悟。最後は、自分を信じて創意工夫。「言うはやすし、行うはやすしきよし*1です。

*1:やすしきよし」さんのような漫才師には、並大抵のことではなれないことを意味しています。