書名:エンデュアランス号漂流記
著者:アーネスト・シャクルトン
出版社:中央公論新社 中公文庫
出版年:2003年
「求む男子。至難の旅。わずかな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証なし。成功のあかつきには名誉と賞賛を得る。」
これは、イギリスの極地探検家、アーネスト・シャクルトンが、1914年ロンドンの新聞に掲載した「南極横断探検隊」の隊員募集の広告と言われています。この求人広告に5000人もの応募があったそうです。
この本は、探検隊の隊長であるシャクルトン自らによって綴られた漂流の記録です。
1914年12月、シャクルトン隊長以下28名を乗せたエンデュアランス号が、南ジョージア島から南極大陸に向けて出航しました。目的は、当時世界初となる南極大陸横断です。
しかし、エンデュアランス号は、南極大陸到達の直前に厚い氷に閉ざされて身動きがとれなくなってしまいます。船は氷の圧力で砕かれ沈没し、隊員たちは浮氷の上での生活を余儀なくされてしまいます。遭難です。シャクルトンの企ては失敗しました。
けれども、シャクルトンのリーダーシップとタフな精神力と体力は超人的です。常に全員の無事を考える、今どうすべきか、次にどう動くべきか、メンバーの健康状態はどうか、精神状態はどうか。彼は、このようなことを考えながら、自分も動き、メンバーの強みを活かしつつ人々を動かせる人でした。
不安定な氷の上で漂流し、何とかエレファント島に到着します。この島は陸地ではありますが、極寒の絶海の孤島なので、救援を要請する手立てを考えなければなりません。食料不足、燃料不足、メンバーの体力低下のため、ゆっくり考えている暇はありません。
シャクルトンを含め6名のメンバーが、南ジョージア島に向けて荒波の中を小さなボートで16日間の決死の旅に出ました。島に到着しましたが、人々がいる捕鯨基地は島の反対側です。氷で覆われた危険な山を越えて、ようやく捕鯨基地にたどり着きました。
次は、エレファント島に残った22名を早期に救助しなければなりません。多くの協力者に恵まれましたが、救助船の手配がうまくいかず紆余曲折して、1916年8月、残る22名をやっと救出しました。
極寒の中、次々とピンチが訪れました。それらをシャクルトンの適切な判断で切り抜けていきます。彼のリーダーシップは神業と言えます。
「リーダーシップ」とはどういうものかを考察する場合、一度は熟読しておきたい一冊です。ちなみに「エンデュアランス」という英語は、忍耐や持久力のことを意味します。