仕事力

心に響く自己啓発

「阪急電車」を読んで

書名:阪急電車

著者:有川浩(ありかわ ひろ)

出版社:幻冬舎文庫

出版年:2010年

 

この本は、関西私鉄のローカル線、阪急今津線を舞台とした物語です。路線情報によると、今津線の宝塚~西宮北口間は、乗車時間14分、運賃が200円です。この区間には八つの駅があります。宝塚駅からスタートして各駅に停車して西宮北口駅に着き、今度は西宮北口駅から宝塚駅に折り返すルートでのお話です。

駅ごとに登場人物が変わり、時には恋をしたり口論をしたりしながら、登場する人たちが話のところどころで絡み合うところが絶妙です。特定の主人公はおらず、電車を利用する人々の笑いあり涙あり怒りありのストーリーで構成されています。

作品では

全国的知名度が低いであろう今津線を主人公とした物語である。

と説明され、拝読中もまるで自分がその電車内に居合わせているかのような気分になります。登場人物には老人もいますが、学生や若い社会人の存在感が強く印象に残り、僕は自分の青春時代と重ね合わせました。

今津線の「小林(おばやし)」という駅の描写には感心しました。駅や周辺の町にツバメの巣が多くあるそうで、ツバメの子育てのために駅員や町の人々が創意工夫しています。その温かい話を拝読して、著者が調査を綿密に行い、素晴らしい着眼力で本作品を執筆なさったものと感じました。

何気なく電車に乗ることが多いと思いますが、電車で何かが起こる可能性があります。僕が最近ドッキリしたのは、外国人に「〇〇駅に行くには、この電車で良いか」と英語で尋ねられ、何とか「イエス」とだけ答えることができたことです。

とても読みやすい作品ですが、テーマは何だろうかと考えました。あえてテーマを一つに絞るとすれば、「電車と人」ということになると、僕は思います。読了後は電車に乗る際今まで以上に、ワクワク感、ドキドキ感が強くなることでしょう。