仕事力

心に響く自己啓発

一貫性の原理とは?

ロバート・B・チャルディーニさんが、名著「影響力の武器 第二版」(誠信書房 2007年)*1の中で提唱しているものの一つに、一貫性があります。

一貫性の原理とは、自分の言葉、信念、態度、行為を一貫したものにしたい、あるいは、他人にそう見られたいという人間の心理的傾向です。著者は、事前に相手のコミットメントを取り付け、一貫した態度を取らせれば、最終的に承諾を引き出しやすくなると説いています。

この一貫性を応用した交渉術に「フット・イン・ザ・ドア」があります。名称の由来は、英語の「put foot in the door」です。営業マンが顧客先のドアが開いたところに足を突っ込んで、閉められないようにする様子が描写されています。この交渉術は、目的とするオファーを通すために、最初はハードルが低いオファーからスタートし、段階的にオファーのハードルを高くしていくものです。

たとえば、高額な商品・サービスを販売する際にまずは、セミナーやお試し版など、小さなオファーから段階を踏んでもらう方法があります。

フット・イン・ザ・ドアに似た交渉術に、「ローボール・テクニック」があります。ローボール・テクニックとは、先に好条件だけを提示して、その好条件に承諾していただいてから、悪い条件を付け加えたり、好条件を取り除いたりする交渉術です。その場で契約が成立したとしても、ローボール・テクニックは顧客との長期的な信頼関係を維持するには適切ではないでしょう。

チャルディーニさんらは、ローボール・テクニックの効果を検証する実験を行いました。その実験は、心理学の受講学生に、朝7時(早起きしないといけない)に始まる研究に参加することに同意してくれるかどうかを確認するものでした。

ローボール・テクニックを用いないグループの学生には、はじめから開始時間が朝7時だということを告げました。このグループで参加を申し出た学生はたった24%でした。

ローボール・テクニックを用いるグループの学生には、まず、参加したいかどうかを尋ね、それに答えてもらった上で開始時間が朝7時だと伝えました。最初に参加したいと答えた56%の学生は、朝7時だと後から聞いても誰も考えを変えませんでした。

一貫性の原理を使った勧誘に対する防衛方法としては、やりたくないと思うオファーを受けていると気づいたら、勇気を奮って断ることです。勧誘を受ける側としては、一貫性という人間の傾向につけ込んだ手口だと認識して、毅然とした態度で対応することが大切です。

 

coco02hibi9.hateblo.jp

 

*1:「影響力の武器 第三版」が出版されています。