僕が住んでいる所の近くに、S店があります。S店は洋菓子や和菓子を工場で製造し、全国の店舗で製品を販売しています。来店客が多くて、土日・祝日は店内が混雑しています。商売繁盛といえましょう。
この店はなぜ繁盛するのか、それは美味しいお菓子を安い値段で買え、店員さんの応対もいいからです。低価格高品質路線です。
一方、近隣のほかの洋菓子店や和菓子店では来店客が多くて混雑している様子を見たことがありません。それは、美味しさがS店と大きくは変わらないのに、値段が高いからでしょう。値下げしたら、売上が増えて儲かるのではないかと、ふと考えてしまいました。
しかし、永井孝尚さんは「売ってはいけない」(PHP新書 2019年)というマーケティング関連書の中で、次のように述べておられます。
「高く売る」という高価格戦略は、一見すると難しそうに見える。
しかし実際には、低価格戦略で成功し続けるほうが、はるかに難しいのである。
儲けるためには、利益を出さないといけません。
製品1個の価格-1個当りの原価=1個当りの利益
原価がそのままで価格を下げると、1個当り利益は減ってしまいます。
原価は、売上高に比例して増える「変動費」と、売上高に関わらず一定の「固定費」に分けることができます。
上記の算式で、1個当りの変動費は一定の金額です。たとえば、材料費や製品を作る人の賃金が当ります。
1個当りの固定費は販売数量が増えると徐々に減少します。たとえば、工場や店舗の設備費用や事務経費が当ります。
1個当り製品原価が固定費分だけ徐々に減少する程度では、製品やサービスの質を維持向上させながら、販売価格を下げて利益を確保するのは至難の業です。また、販売数量増加を促進するための仕組みを創設するのも容易ではありません。
S店は長い年月をかけて、原価を削減し店舗を増やし販売数量を増やして来られたのでしょう。S店には低価格高品質の好循環ができあがっています。
S店以外の近隣の店は、価格は高いけれども、S店にはマネのできない製品やサービスを提供していくほうが、現実的ではないでしょうか。
我が家も普段はS店やスーパーでお菓子を買いますが、ここ一番のときは、ほかの店でケーキやまんじゅうを買うようにしています。