書名:おらおらでひとりいぐも
著者:若竹千佐子
出版社:河出文庫
出版年:2020年
主人公は後期高齢者になるのが間近の74歳の老女です。故郷の東北を離れて50年になります。夫とは恋愛結婚し31年間暮らしましたが、心筋梗塞で先立たれました。愛だ恋だというのが借り物の言葉でしかないくらい、惚れて惚れ抜いた夫に尽くしました。娘と息子の二人の子供に恵まれました。
娘は、野菜はあるか、米はあるか、などと世話を焼きますが、「お金貸してくれない」とも言ってきます。息子は「もうおれにのしかからないで」と言って家を出ていきます。結局、二人の子供とは疎遠になります。
ひとり暮らしをするうちに、生、死、愛、孤独、自由など色んなことを東北弁で瞑想し、主人公の心は揺れ動きます。こんな昭和の歌のことも考えます。
あなた好みの女になりたい!
着てはもらえぬセーターを寒さこらえて編んでます
何とかならないのが、この歌詞。この自己卑下。奴隷根性
ようやく自由を謳歌するという方向に到達したようです。
我が家も息子と娘の二人の子供に恵まれて、4人家族でした。子供たちは独立し、今は夫婦二人の生活です。夫婦生活が永久に続けばいいのですが、神様は許してくれないでしょう。いずれは夫婦のうちどちらかがひとり暮らしをする運命にあります。
妻にこの本の要旨を話しました。子供や孫、おばあちゃんの世話で忙しいのに、何を言っているのか、という反応でした。「そうなったら、そうなった時に考えたらいいでしょう」というのが妻の回答です。
僕はデール・カーネギーさんの著書「道は開ける」(創元社 2016年)を開き、
過去と未来を鉄の扉で閉ざせ。今日一日の区切りで生きよう。
というセンテンスを何度も読み返しました。