僕が初めて管理職になった時は、三重苦でした。
- 携わる部署がまったく経験のない仕事をする所であったこと
- 年上の部下がいたこと
- そして何より、初めての管理職であったこと
そういう環境の中で難しい職務に取り組んだこともあり、業績は大したものではありませんでした。何とか大過なく職務を全うできたのは、優秀な上司に恵まれたからでしょう。
松下幸之助さんは、その著「指導者の条件」(PHPビジネス新書松下幸之助ライブラリー 2014年)において、こう述べておられます。
特に指導者は、こと熱意に関してはだれにもまけないものを持たなくてはならない。知識なり、才能なりにおいては、人に劣ってもよいが、熱意については最高でなければならない。指導者にぜひともこれをやりたいという強い熱意があれば、それは必ず人を動かすだろう。そしてその熱意に感じて、知恵ある人は知恵を、才能ある人は才能をといったように、それぞれの人が自分の持てるものを提供してくれるだろう。
今から思うと、僕の熱意が足りなかったと反省しています。高いビジョンを掲げ、部下を巻き込んでいく熱意が不足していました。
P.F.ドラッカーさんは、「マネジメント エッセンシャル版」(ダイヤモンド社 2001年)の中で、石切り工の逸話を述べておられます。
三人の石切り工の話がある。何をしているかを聞かれて、それぞれが「暮らしを立てている」「最高の石切りの仕事をしている」「教会を建てている」と答えた。第三の男こそマネジャーである。
教会を建てることこそがビジョンであり、そこに達するために熱意を傾けることが基本的に必須であると、僕も同感です。
マネジャーとしては失格ですが、第一の男や第二の男の考え方についても、働く者として同感できます。
苦境に陥った時、家族の写真を見て、生計を維持できるように踏ん張ることも必要でしょう。
また、技能や知識も多少は磨くことにより、部下の言いなりにならず、より高いビジョンを掲げることも可能になるのではないでしょうか。
石切り工の逸話とは別の観点になりますが、管理職として最低限の振る舞いがあると、僕は思っています。
第一に、「おはよう」「ありがとう」「お疲れさま」、三つのあいさつを自ら進んで励行すること。年上の部下に対しては、より丁寧に接することが必要です。
第二に、部下の顔色や様子をうかがい、身体的あるいは精神的に病んでいないかどうかに注意を払うこと。
第三に、管理職になっても、常に謙虚な心を持ち続けること。
管理職になった時、僕は大いに緊張しました。ですが、実力を発揮するには、できるだけ気を楽にして、階段を一段一段、着実に登って行ってはいかがでしょうか。