トイレを掃除しようとか、清潔にしようとかという話は、数々の本で語られています。
自動車ディーラーの経営者、カール・スウェルも、その一人です。彼は、「一回のお客を一生の顧客にする方法」(ダイヤモンド社 2004年)という著書で
「トイレをきれいにしていることは非常に重要なことである」
「顧客はあらゆるものから企業を判断する。トイレを汚れひとつなく清潔にし、センスよく飾ることによって、顧客に対する配慮を示すことができる。また他社との差別化も可能となる」
と述べています。
トイレがきれいだからといって商品を買ってくれる人はいません。しかし、トイレが汚れていると、提供する商品やサービスもいい加減ではないかという疑いを持たれてしまいます。
彼はまた、従業員用のトイレも清潔に保っています。顧客だけでなく、従業員も大切にしているというメッセージです。
スウェルと同じく自動車ディーラー経営者の相澤賢二さんも、同様あるいはそれ以上のことを、著書「ビジネスの底力!」(PHP研究所 2005年)で語っています。
清潔なトイレなんていうのは基本中の基本なんですよ
彼の会社では「トイレは楽しく」が基本になっています。いろいろな手作りの飾りを設置したり、絵を飾ったりして、トイレを楽しいものにしています。お母さん方に好評な「紙おむつ」も包装して置いています。
僕の義父は生前、早朝、自分の経営する会社に出勤し一人でトイレを清掃していたと、妻から聞きました。顧客のため、従業員のため、ひいては会社のために。
映画「リンカーン」(2013年劇場公開)の中で、リンカーン大統領はトイレに関するジョークを語っています。アメリカ独立戦争の活動家、イーサン・アレンの逸話です。
独立戦争のあと平和が訪れた時、アレンは英国王と今後のことを話し合うため、ロンドンに出向いた。
ある日、アレンはイギリスの貴族の屋敷に招待された。ごちそうになり、彼は用を足す必要に迫られ、無事トイレに案内され、ホッと一息ついた。
ところが、トイレで思わぬモノを発見した。そこには、ジョージ・ワシントンの肖像画が飾られていた。
もといた客間に戻ったアレンは、何も触れなかった。
貴族たちはがっかりした。あるじは我慢できなくなって、「ワシントンの肖像画に気づいたか」と尋ねた。
アレンは「ええ」と答えた。
あるじは「飾ってある場所はふさわしいか」と尋ねた。
アレンは「ふさわしい」と答えた。
あるじは驚いた。「ジョージ・ワシントンの肖像画がトイレにあるのが、ふさわしいか」と。
アレンは言った。「あそこなら役に立ちます。イギリス人は恐怖におののき、サッとクソをたれると世界中に知れ渡ります」と。
リンカーンの人徳でしょうか。トイレを清潔に保つだけでなく、トイレに関するジョークもまた、このようにきれいに語りたいものです。