書名:ナミヤ雑貨店の奇蹟
著者:東野圭吾
出版社:角川文庫
出版年:2014年
図書館でたまたま手にとったのがこの著書です。この著書を原作とした映画はだいぶ前に見たことがありますが、東野さんの著書を拝読するのは初めてです、。テンポよく読めるわかりやすい本です。興味深い内容で、短い文が多いのが特徴です。
泥棒という悪事を働いた青年3人組が、今はもう誰も住んでいない老朽化した建物に逃げ込みます。そこは、かつて手紙の悩み相談を無料で請け負っていた店主、浪矢雄治の店、ナミヤ雑貨店でした。廃業した店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきました。過去の世界から投函された手紙です。3人は「どうしよう」と言いながらも当時の店主、浪矢雄治に代わって返事を書きます。
過去と現在を行き来する物語は、前回のブログ(「地下鉄(メトロ)に乗って」を読んで)から連続です。今回は、廃業した雑貨店が過去と現在をつなぐポイント地点になっています。
切実な相談の手紙、つらい悲しい物語の連続ですが、章を追うごとにそれぞれのつながりが見えてきます。すべては、最終章への伏線であったとも言えます。
3人組は白紙の手紙をシャッターの郵便口に投函します。その白紙の手紙に対して、過去の世界の浪矢雄治じいさんは丁寧にアドバイスの手紙を書きます。3人組は心を改めて自首すると決めたところで物語は終わります。
過去と現在を行き来することは奇蹟ですが、人生を左右する切実な相談の手紙に的確な回答の手紙を書けるということもまた奇蹟です。通常「責任が重すぎて回答できません」と回答するでしょう。こんな難しい仕事を請け負うのは、有料でも有りえないなというのが実感です。
結局のところ、決めるのは相談した本人です。回答の巧拙に関わらず、相談者が真摯にアドバイスを受けとめて努力することが大切なのだと言えましょう。