トイレの小便器の上に、「いつもきれいにご使用いただき、ありがとうございます。一歩前に…」などと書かれた紙がよく貼られています。
デザイナーの佐藤オオキさんは、「半歩前に」と書かれた紙をたまたま見て、いい感覚だなと思ったそうです。著書「問題解決ラボ」(日経ビジネス人文庫 2020)に記されています。
「半歩前に」という感覚は、デザインの世界でも「ちょうどいい」そうです。
一歩前に出て「誰も見たこともない」商品を開発すると、ユーザーと大きなズレが生じてしまうらしいです。「補充する」くらいの感覚、つまり、「半歩前」の歩み寄りが重要なのです。
一歩前に出た商品は、まずユーザーに使い方やメリットを啓蒙することから始める必要があるでしょう。その点、半歩前に出た商品はユーザーに受け入れられやすいでしょう。
僕の高校時代、教育実習に来られた学生さんが、大学で研究しているテーマのことを熱心に講義されたことを覚えています。僕たち生徒は何もわからず、呆気に取られるばかりでした。もし、半歩引いた講義をなさっていたら、興味津々の授業になったかもしれません。
読書でも然りです。100%未知のことが述べられた本は、99%読むのを断念してしまうでしょう。50%が既知、50%が未知の本が面白いのではないでしょうか。
僕はデザインのことは門外漢です。佐藤さんの本は、僕にもわかることが半分、残り半分がデザインの話です。だから、面白く読み進めたと思います。
僕のブログも「半歩前に」を目標に精進したいです。