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「異質」の人が集まると?

16~17世紀の話ですが、オランダはもともとスペインの植民地でした。オランダの国民はプロテスタントですが、カトリックの国、スペインから重税だけでなく宗教の弾圧も受けていました。

田中靖浩さんの著書「会計と経営の七〇〇年史」(ちくま新書 2022年)によれば、オランダが建国した後、ヨーロッパに向けて次のように宣言したとのことです。

「俺達は宗派を問わず商売人であれば歓迎する。商売好きよ、来たれ!」

カトリックに対して憎悪が残るところですが、オランダ人はそうは思わなかったのです。色んな得意技のある人たちがオランダに集まってきた結果、経済的に大いに栄えました。

オランダは、スペインやポルトガルが開拓した東アジアにも進出しようとします。その際に設立されたのが、「東インド会社」という株式会社です。オランダは、世界で初めての「株式会社」を発明しました。

この事業には巨額の資金が必要です。従来、資金調達は借り入れによって行われていましたが、それでは経営が安定しません。東インド会社は、株主から「出資金」として資金を調達します。株券の売買が必要になるので、「証券取引所」も発明しました。

株主は、東インド会社が利益を出した時は配当金を得ることができます。また、株券の売買価格は証券取引所での取引によって決まるので、株券の買取りと売却による差益を獲得することもできました。当時としては、画期的な投資だったのです。

このような発明、すなわち、イノベーションを「いつもの人たち・気の合う人たち」だけで起こすのはなかなか難しいと、著者は言います。未知の発想・アイデアを持つ「異質」の人が集まる場をつくったことが、オランダのイノベーションにつながったのではないでしょうか。

一方、オランダの宗主国であったスペインは、純粋なカトリック教徒以外の人を排除していきました。そのため、異教徒の有能な人材が外国に流出します。大植民地を獲得していたスペインですが、しだいに衰退していきました。

 

出口治明さんは、著書「最後の講義 完全版」(主婦の友社 2021年)の中で、こう述べています。

イノベーションは、既存知と既存知の新しい組み合わせです。既存知と既存知の間の距離が遠いほど、面白いアイデアが生まれやすいことは経験則として広く知られています。

自分とは異なる、得意分野を持つ人や考え方を持つ人、すなわち「異質」の人が集まることによって、思いもよらない発想ができるのではないでしょうか。