田中靖浩さんの著書「会計と経営の七〇〇年史」(ちくま新書 2022年)は、会計や経営のやり方が発達していくプロセスをわかりやすく面白く解説されており、一読の価値があります。
著者はまた、絵画などの芸術についても造詣が深く、この著書にも折々に絵画などのことが触れられています。
しかし、著者は小学生の頃、美術という科目はずっと苦手だったそうです。
絵画の専門家と著者が対談して、美術の授業が「実技教育」に偏り過ぎていると述べられています。
絵を描かせる前に、子どものうちから名画を鑑賞して「いいなあ」と感じる機会をつくることが大切だと。
良いものを鑑賞してセンスを磨くと、いっそう実技の能力も向上するのではないかと思います。作品を評価する能力も磨けるでしょう。
「鑑賞する」→「実技をする」→「鑑賞する」→「実技をする」というサイクルを回すことが望ましいのではないでしょうか。
僕は美術だけでなく音楽も実技が苦手ですが、鑑賞することは好きです。
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の最後に、ドラマの舞台となった寺社などの「紀行」が放送されています。この放送に流れるコハーン・イシュトヴァーンさんのクラリネット演奏が、素晴らしいです。クラリネットの音色がこんなに美しいのかと、魅了されています。
絵画を創作したり楽器を演奏したり、あるいは、それらを評価したりすることは、相当な努力が必要だと思います。しかし、絵画や音楽を楽しんで鑑賞することは比較的容易で、人生を豊かなものにするのではないでしょうか。