仕事力

心に響く自己啓発

左岸と右岸の農夫

幸田露伴さんは、著書「努力論」(夏川賀央訳 致知出版社 2016年)の中で、川を挟んだ左岸と右岸の農夫の話を述べています。

秋に洪水が起こり、左岸では堤防が決壊し収穫ができませんでした。一方、右岸では堤防は難を逃れ収穫ができました。このとき左岸の農夫は「なんて運が悪いのだろう」と嘆き、右岸の農夫は「汗水を流して、苦労してきた甲斐があったな」と喜びました。

「左岸の農夫の言葉」と「右岸の農夫の言葉」の、どちらか一方が間違っているとは言えません。運は実際に存在し、人の力も実際に働いていることも否定できないのです。ただ左岸の農夫は人の力を忘れて運を語り、右岸の農夫は運を忘れて人の力を語っているのに過ぎません。つまり、成功者は自己の努力と解釈し、失敗した人は運のせいにしているだけです。

ジェームズ・C・コリンズさんは、著書「ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則」(日経BP社 2001年)の中で、飛躍的に業績を伸ばした経営者の特徴を述べています。

成功を収めたときは窓の外を見て、自分以外に成功をもたらした要因を見つけ出す。結果が悪かったときは鏡を見て、自分に責任があると考える。

また、スティーブン・R・コヴィーさんは、著書「7つの習慣」(キングベアー出版 2009年)の中で、このように述べています。

問題は自分の外にあると考えるならば、その考えこそが問題である。

先ほどの洪水のため収穫が得られなかった左岸の農夫のことを考えてみましょう。その農夫が自分の責任を重く感じ、「災害が起こることまで十分予測していれば、対策は練れたはずだ」などと反省し、翌年の計画を改善したならば、どうでしょう。幸運に巡り会えるのではないかと思いませんか。