書名:アイデアのつくり方
著者:ジェームス・W・ヤング
訳:今井茂雄
解説:竹内均
出版社:阪急コミュニケーションズ
出版年:1988年
【あらまし】
著者は広告会社のコピーライターとして携わり、副社長にもなった広告に関する達人です。
ある雑誌社の広告部長から次のような質問を著者が受け、その出来事が「アイデアのつくり方」を考察するきっかけとなりました。
<広告セールスの拡張を検討している中で、「広告のスペースを売るのではなく、アイデアを売らなければならない」ことがわかりました。そこで、どうやってアイデアを手に入れたら良いのかを教えて下さいとのことでした。>
著者はアイデア創造の要点をひと言でこう述べています。
アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない
アイデア創造は技術的なもので、次の5段階のプロセスを実践すれば実現するとのことです。
第1 資料集め――諸君の当面の課題のための資料と一般的知識の貯蔵をたえず豊富にすることから生まれる資料と。
第2 諸君の心の中でこれらの資料に手を加えること。
第3 孵化(ふか)段階。そこでは諸君は意識の外で何かが自分で組み合わせの仕事をやるのにまかせる。
第4 アイデアの実際上の誕生。<ユーレカ!*1 分かった! みつけた!>という段階。そして
第5 現実の有用性に合致させるために最終的にアイデアを具体化し、展開させる段階。
第1段階は情報の収集で、第2段階は収集した情報をカードに記入したり資料の切り抜きをしたりして深く考えてみることです。第3段階はいったん考えることを中断する過程で、第4段階は思考のひらめきで、これらの段階は無意識的な活動です。第5段階は具体策を検討することです。
アイデア創造の説明は比較的簡単です。しかし、上記のプロセスを修練し厳密に行う必要があり、インスピレーションも必要とするので、誰もが使いこなせるとはいえないと、著者は述べています。
【竹内均氏の解説の要点】
解説の竹内均氏は思考法についても研究されており、多くの著作があります。
第3段階の要素の新しい組み合わせを、ヤングは無意識的活動としており、天才的なインスピレーションが必要でした。川喜田二郎氏が考案したKJ法により第3段階を意識的活動に変えることができるので(「発想法」「続発想法」)、凡人にもアイデア発想を可能にしたと、述べられています。
最後に、解説者は注意事項として、次のように述べています。
それは方法論や道具に凝ることなく、直ちに仕事を始めよということである。
方法論や道具は手段であり「仕事」が主であるので、本末転倒してはならないということです。
【教訓】
多くのハウツー本には「簡単にできる」とか「短時間にできる」とか述べられていますが、現実はそう甘くないと思います。著者は正直で、修練を必要とする、難しいと述べています。
僕はアイデアを考案するのに、手を変え品を変え試行錯誤しています。
「オズボーンのチェックリストを参照する」「原点に返る」「過去の体験と結びつける」「時間軸を変える」「場所を変える」「5W1Hに当てはめる」とかです。また、忘れないように、アイデアを思いついた時にメモに書いておくようにしています。
外山滋比古さんの著書「思考の整理術」にも、アイデアとなる素材が発酵するまでヤングのように思考を寝かせるとか、三上(馬上、枕上、厠上)や三中(無我夢中、散歩中、入浴中)でアイデアがひらめくとか、述べられています。
僕にとっては、良いアイデアを生み出すのがなかなか難しいです。しかし、竹内さんがおっしゃるように、方法論や道具にはあまり凝らないようにしたいと思います。