仕事力

心に響く自己啓発

「働かない」ことに意義があるか?

アリは小さいけれどもよく働く、とくに働きアリは働き者だと思われています。しかし、進化生物学者の長谷川英祐(はせがわ えいすけ)さんの著書「働かないアリに意義がある」(メディアファクトリー新書 2010年)によると、集団には一定割合の「働かない働きアリ」がいるそうです。アリには刺激に対する反応の違いという個性があり、働かないアリは刺激に鈍いそうです。

こういう研究をしていると、「アリがサボるところを観察するなんて、暇な人がいるものだな」という意見が出てきます。実際、観察するには体力を必要とし、ハードなんですが。

 

ところで、働いていたアリが疲労で働けなくなると、「働かない働きアリ」たちが働きだします。その働きアリたちが疲れてくると、今度は休息をとっていたアリが回復して、また働きだします。こうして、いつもアリの集団は働き続け、労働力がゼロになることはありません。

一方、みんなが一斉に働くシステムでは、同じように働いて同時に全員が疲れてしまうので、誰も働けなくなる時間が生じます。アリが卵を世話する場合を例にあげると、その仕事が中断すると、その卵にカビが生えて孵化(ふか)しなくなり、集団の存続が危ぶまれます。みんな働けなくなる時間が生じると、集団は何世代にもわたる長期間の存続ができなくなるのです。

だから、「働かない働きアリ」は怠けて集団の効率を下げる存在ではなく、それがいないと集団が存続できない、重要な存在だと言えます。

 

このことは、人間世界においても大切な示唆を与えてくれます。

現在の事業に組織のリソースを100%投入してしまうと、新しいビジネスが生まれなくなる恐れがあります。つまり、100%効率的な組織をつくってしまうと、環境変化に適応できなくなってしまいます。

そこで一例ですが、グーグルでは「20%ルール」があるそうです。業務時間のうち20%を自分の好きなことに使っていいというルールです。すぐに見返りがないかもしれませんが、将来大きなチャンスが芽生えることを期待されています。

経営コンサルタントの石原明さんは、稼働時間のうち3割は本業以外のことに使いなさい、自分の成長のために使いなさいとおっしゃっていたのを記憶しています。たとえば社外の人と会って話を聞くなどです。

 

長期的に見ると、100%の効率性を求めるよりも、将来を見据えた非効率(本業で働かないこと)を混在させるほうが望ましいと言えましょう。