志賀内泰弘(しがない やすひろ)さんの著書「寝る前5分で読める心がほっとするいい話」(イースト・プレス 2017年)を読むと、ほっこりとします。その中に、著者が名古屋のタクシー運転手の古川さんからお聞きになった、なるほどと思う話があります。
タクシー運転手が好業績をあげるには、遠距離の利用客をゲットすることが大切だそうです。しかしながら、そう簡単に遠距離客に利用してもらうことはできません。
古川さんは、深夜12時半すぎ、繁華街のクラブやスナックで仕事を終えた女性客に利用してもらうことが得策だと言っています。ほかにも空車のタクシーがたくさんあるのですが、このような女性客は家が近いため、労多くして功少なしと考えて相手にしていません。
古川さんは、初乗り運賃しか儲かりませんが、喜んでこういう女性客に乗ってもらいます。そして、やさしく声をかけます。
「お疲れさまでした。今日はお仕事どうでしたか?」
すると、愚痴がポツリと漏れたりします。古川さんは聞き役に徹します。そして女性客が降りる際に、「お困りのときはお電話ください」と、自腹で作った名刺を手渡します。
そうしておくと、その女性客が店主に「感じのいい運転手さんがいるのよ」と、推薦してくれたりもします。店のお客様がお帰りの際に、信頼できるということで古川さんに電話がかかってくるそうです。長距離客です。もちろん、その長距離客にも固定客になってもらうために、気配りを忘れないそうです。
夜中の11時頃、繁華街の細い道は大渋滞で、なかなか大通りに出られません。そんな時、古川さんはこう言います。
「お客様、通りに出てからメーターを倒しますね」
こういう応対をすると、利用客は感激して固定客になってくれることがあるそうです。
目先の利益(遠距離客)を狙っているだけでは、成果はあがりません。利用客に気配りしながらコツコツ努力することが、好業績をあげるコツだそうです。
最初から良いことに出会えません。良いことは、努力すると後から付いてくるのです。