仕事力

心に響く自己啓発

論文を読む:説得の心理学

論文名:説得の心理学

著者:ロバート・B・チャルディーニ

出典:「マネジャーの教科書」ダイヤモンド社 2017年

発表年:2001年

 

【あらまし】

芸術家は一般に、アートを実践することには長けていますが、その秘訣を他人に伝えることは苦手です。「説得の達人」も芸術家と同様です。

この論文は、達人から伝授してもらえそうにない「説得術」について科学的に探究したもので、実務に応用するヒントになります。

説得には6つの基本原則があって、教え、学び、応用できるものと述べています。

(原則1)好意を示す

「相手との共通点をアピールすること」と「相手を称賛すること」の2点によって、好意を示し、友好関係を築くことができます。

(原則2)心遣いを怠らない

プレゼントを贈ったり、他者の仕事を手伝ったりすることにより、助け合いの精神に訴えることです。人は親切な行為を受けると、それに答えたくなるものです。謝意を伝えられた時は、「お互い様です」のひと言が重要です。

(原則3)前例を示す

影響力は上から下へよりも、横方向に強く働きます。他の組織メンバーや友人など、他者の前例を相手に示すことです。

(原則4)言質を取る

人は首尾一貫した行動や姿勢を示したいという心理に着目したものです。明確に、公に、そして自主的にコミットメントしてもらうと、説得しやすくなります。

(原則5)権威を示す

自分の専門性や専門知識を相手にさりげなくアピールすることにより、専門家と認められ説得しやすくなります。

(原則6)稀少性を巧みに利用する

手に入りにくいものほど大きな価値があります。自分だけの強みや独自の情報だということをPRすれば、人は動きやすくなります。

以上、6つの原則を組み合わせて用いると、説得の効果が高まります。ただし、誤った情報による誘導は許されるものではなく、マイナス効果にもなってしまいます。倫理が重んじられます。

 

【教訓】

説得を扱った有名な本としては、デール・カーネギーさんの「人を動かす」があります。「人を動かす」はたくさんのエピソードを紹介して、カーネギーさんの意図を説明していく形を採っています。しかし、基本的に科学的に実証されたものではありません。

一方、この論文は科学的に実証された知恵を読者に教えてくれます。「(原則1)好意を示す」以外は、「人を動かす」ではアピールされていない知恵です。

また、この論文で示された説得の原則は、マーケティングやセールスにも活用できる内容になっています。「有名な○○さんも使っています」、「○○大学教授も認めています」、「申込期限は○○までです」「○○個限定です」などといったコマーシャルに接したことがあります。

最後に、この論文にも記されているとおり、誤った情報による誘導は決してあってはならないものと肝に銘じなくてはなりません。正しい仕事力向上のために。