僧侶の浦上哲也(うらかみ てつや)さんは、著書「てきとう和尚が説くこの世の歩き方」(PHP研究所 2022年)で「適当」に生きてはどうかと問うていらっしゃいます。
「適当」を辞書で引くと、次のように記されています。
① ある状態や目的などに、ほどよくあてはまること
② その場に合わせて要領よくやること。いい加減
著者は、カタカナで「テキトー」と表記されるような②の意味ではなく、①の意味での「適当」を勧めておられます。
無理をせず、偏らず(かたよらず)、今の自分にちょうどよい生き方、在り方。そんな適当さを身に付けられれば、それは皆さんの生きやすさに繋がる(つながる)はずです。
仏壇に関するエピソードがあります。
Kさんは奥さまを亡くされましたが、ご自宅に仏壇がありません。自宅に遺影や位牌があると、亡くなってしまったことを常に突きつけられるようで、どうも気が進まなかったようです。
しかし3年が過ぎ、Kさんはようやく仏壇を求める気持ちになりました。仏壇店が並ぶ東京・上野の仏壇通りを訪れました。ところが、どのお店でも仏壇の特徴や値段など、熱心な「売るための説明」を受けるばかりです。なかには、「今日決めたら3万円値引きします」と売り込みが激しい店員さんもおられ、結局その日は仏壇を買いませんでした。
後日、Kさんが外出していてふと見つけた仏壇店に入りました。そこの店員さんはガツガツしておらず、適当に肩の力が抜けた雰囲気でした。なぜ仏壇を買うのか、どうして3年経ってからなのか、Kさんの話をしっかりと聞いてくれました。売り込まない適当さが良かったのか、Kさんは、そのお店で仏壇を購入されました。
著者は、ここぞという時ほど、心の弦を適度な張り具合に調節しなさいと述べています。
緩めすぎず、張りつめすぎず、ほどよさを目指す
この著書を拝読して僕は、古くから言われている「中庸」が大切なのだなと、改めて思いました。
追伸
この著書には、仏教のエピソードや宗教以外の話がたくさん散りばめられています。その中で、とくにこれは知っておいたら得と思った4点を紹介いたします。
1 集合写真の撮影係になった時のかけ声
①「はい、チーズ」と②「1+1は?」というかけ声があるそうです。②のほうは知らなかったです。いずれにしても、母音の「イ~」と声を出している時が笑顔になり、シャッターを押すタイミングとなります。ちなみに、僧侶の集まりでは「はい、ボ~ズ」が定番だそうです。母音の「イ~」が入らないことが難点です。
2 ウケ狙いの話がスベった時
コメディアンの小堺一機(こさかい かずき)さんは、スベった時にすかさず「東京にもこんな静かな場所があったんですね~」と切り返して笑いを取っていたそうです。
3 水商売の女性に会話術を教える講座
そこで教えるのは「さしすせそ」です。「さ=さすがですね」「し=知らなかったです」「す=ステキですね」「せ=センスがいいですね」「そ=そうなんですね」という受け答えの基礎を教えてくれるそうです。
4 自利利他円満(じりりたえんまん)
仏教の言葉です。自利と利他はつながりあっているという意味です。