デール・カーネギーさんは著書「人を動かす」(創元社 文庫版 2016年)の中で、人の心をとらえるには、相手が深い関心を持っていることを話題にすべきだと説いています。
事例の一つとして、ボーイスカウトの仕事をしているエドワード・チャリフさんの手紙を紹介しています。手紙の内容を要約します。
チャリフは、ヨーロッパで行われるスカウトの大会に代表の少年を出席させるために、資金調達を進めていました。ある大会社の社長に寄付をお願いしようと会いに行く前に、その社長が百万ドルの小切手を振り出し、支払い済みになった小切手を額に入れて飾っているという情報を得ました。
社長に会うとすぐに、彼は百万ドルの小切手を拝見したいと頼みました。百万ドルという多額の小切手を実際に見た話を、スカウトの子どもたちに聞かせてやりたいのだと、理由を説明しました。社長は喜んでその小切手を見せてくれました。チャリフは感心して、その小切手を振り出した経緯を詳しく聞かせてもらいました。
そのうちに、社長から「ところで今日の用件は何か」と尋ねられ、ボーイスカウトの寄付の話を切り出しました。
驚いたことに、社長はチャリフの願いを快く引き受けてくれたばかりでなく、予期していない協力まで申し出てくれました。
このエピソードでは、チャリフは先方の関心事(高額の小切手)だけにフォーカスを当てています。もし彼が、最初に自分の関心事(寄付をして欲しい)から話を始めていたら、きっと違った結果になったことでしょう。
相手の深い関心があることを話題にして成功しました。また、人に会う前に相手の関心のありかをよく調べておくことも大切です。
カーネギーは、こう提唱しています。
相手の関心を見抜き、それを話題にするやり方は、結局、双方の利益になる。
ただし、相手次第で交渉の成果が大いに出る場合もあれば、そうでない場合もあります。しかし、どんな相手と話をしてもそのたびに自分自身の人生が広がると、前向きにとらえることができます。