仕事力

心に響く自己啓発

「聞き流してください」と言われると、人は聞き流さない

コピーライターの川上徹也さんの著書「面倒なお願いでも、気持ちよく相手に届く伝え方は?」(アスコム 2022年)を拝読しました。この著書には多数の参考文献が記されており、そのすべてが海外の文献(一部翻訳書があります)です。本当は難解な内容を初心者向けにわかりやすく解説してくださったのだと思います。

著書の中で「忘却逆説効果」と言われる現象について、海外の大学での実験研究成果を二つ紹介されています。二つとも大学内で大学生を被験者として行われたものです。

一つ目の実験研究です。

まず、被験者の学生に60語の単語を覚えてもらいます。そのうち半数の学生には「絶対忘れてはならない」とプレッシャーをかけ、残りの半数の学生には「忘れてもいいよ」と気楽に臨むよう声をかけました。

実験の結果、「忘れてもいい」と声を書けられた学生たちのほうが、よく記憶していたことがわかりました。

もう一つの実験研究です。

架空の「強盗殺人の裁判記録」を作成し、それを学生たちに読んでもらい、「あなたが裁判官ならどんな判決を下すか」を問う実験です。

裁判記録には残虐な犯行状況も記されており、感情的になる内容でした。約半数の学生には何も伝えす読んでもらい、残りの学生には「感情的な文章は無視してください」と伝えました。

実験の結果、感情的な部分を無視するように言われた学生たちのほうが、何も言われなかった学生たちより、大幅に厳しい判決を下しました。

人って不思議ですね。

サラリーマン時代、僕は「ここは聞き流してください」という表現をときおり使ったことがあります。おそらく聞き手の方は、耳をそばだてて僕の話を聞いていただいたものと想像されます。聞き流してけっこうですと言った話のほうが、聞き手の印象に残ったのです。

学問的な根拠は知らなかったのですが、経験的に使っておりました。ただし、「聞き流してもらう」話は、聞き手の興味をそそる内容のものにしていました。

どうやって聞き手の方に関心を持ってもらうかを工夫するのも面白いものですね。忘却逆説効果も勉強になりました。