小宮一慶さんは「ダブルチェック」に反対していらっしゃいます(「社長の心得」(ティスカヴァー 2014年))。
ダブルチェックは責任を分散させ、人を甘くする。甘いプロなどいない。一人で仕事をまっとうさせなければプロは育たない。
これは小宮さんの会社の方針でもあります。ごもっともなご見解だと思います。ダブルチェックを仕組みに採り入れたからと言って、ミスを根絶できるものではありません。
古い名著ですが、小林茂著「ソニーは人を生かす」(日本経営出版会 1965年)によれば、
フォードのルージュ工場のスローガン「品質とは、製品のなかにつくりこまれるものであって、検査することのできないものである」
と、品質の検査はできないことが記されています。作り手の技術や意識のレベルで品質が決まるものと、僕は解釈しています。
顧みると、僕が還暦以後に勤務した職場では、お客様あての郵便物を封入するに当ってトリプルチェックを行っておりました。
作業自体は定型業務なのですが、誤って郵便物を発送すると、個人情報や機密情報の漏洩という重大なトラブルが発生するからです。
プロである以上、一人で職務をまっとうしなければならないのは、小宮さんがおっしゃるとおりです。
しかし、組織として機能させる上では、ダブルチェックやトリプルチェックのような目に見える仕組みをつくるしか、名案がないでしょう。
新しい同僚が入ってくると僕は、個人情報や機密情報の漏洩は致命的なミスにつながるので、定型業務であっても注意を怠らないで欲しいと言いました。
実務的には組織としては、ダブルチェックやトリプルチェックのような体制を築くしかないでしょう。ただし、担当者は各々、小宮さんがおっしゃるようなプロ意識を持って職務を遂行することが必要です。そうすれば、ミスを根絶できるのではないでしょうか。