研修講師でいらっしゃる齋藤正明さんは「『自己啓発』は私を啓発しない」(マイナビ新書 2013年)という本で、「自己啓発」の限界を述べられています。
自己啓発セミナーや高額教材に600万円以上つぎ込んだ著者が、自己啓発にハマった日々を振り返っておられます。
著者は「自己啓発」を、自分で進化・向上していくことを目指すものだと説明しています。
しかし、大きく分けて、自己啓発に関する三つの問題があると、この本から僕は解釈しました。
第一に、自己啓発にのめり込んでいる人の中には、自分の行いは正しい。一方、他人が自分と同じようにならないことはおかしいという錯覚を持ってしまうケースが見られるとのことです。
第二に、その講師の勝ちパターンを教えられているだけであって、自分に合うやり方だと鵜呑みしてはならないことです。習ったことを元にして、自分に合ったやり方に自分で考える必要があります。
第三に、自己啓発は前向きです。ところが、余りにも前向き思考ですと弊害も生じます。
そこで、
・明るい人は、ときには後ろ向きに考えることをする
・後ろ向きな人は、ときには前向きに考える
そんなバランスをとった思考をしていくことが、上手に人生を渡っていくためには必要だと述べられています。
これらの自己啓発に関する問題点について、僕は次のように考えています。
第一の問題点については、自己啓発は他人を含め環境を変えられないということです。むしろ、環境にどう適応するかが、自己啓発の一つと捉えています。
第二の問題点については、著者の成功物語といった本が多いので、そのまま用いることはできないという前提で、読書を中心とした自己啓発を僕は行っています。
第三の問題点については、単に「前向き」というだけではなく、他人や環境への感謝の心や謙虚な態度を学ぶことが重要だと考えています。
ちなみに、僕は有料セミナーに参加したり高額教材を購入したりしたことはありません。市販の本を買ったり図書館で本を借りたりすることがほとんどです。また、無料の講演会や人との雑談などの中からも学ぶことがあります。
著者は、本文の最後に次のように述べられています。
「人生」や「ビジネス」での学びの場面は何もセミナールームだけではありません。日常で起きたすべてが学びの種になります。
・何かを試し、うまくいったら自分の成功パターンのひとつとして記憶する
・失敗したら違うやり方を試して、成功を目指す
・優れた人がいたら嫉妬をせず、真似できるところは真似する。
・嫌な人がいたら、反面教師として活かす
僕も、実務での取り組みの中で学ぶことがいちばん大切だと考えています。